Q&A3505 33歳、10回目移植で全て陰性 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2022.4.18「Q&A3270 7回移植で全て陰性、今やるべき事は?」で質問させて頂いたものです。その節は返信頂き、ありがとうございました。その後3回、貴院で移植を行いましたが陰性に終わり、凍結胚は無くなってしまいました。今後の事を考えており、また助言を頂きたく、メッセージを送らせて頂きました。

前回投稿後の移植ですが、
2022.6 子宮内膜ポリープ切除手術
2022.7 8回目移植 ホルモン補充 ±0日(黄体補充5日目)4AA→5AAと4BC→5BCと4CC→5CCの3個移植、G-CSFとPRP子宮内注入とエンブリオグルーとイントラとピシバとヘパリンをオプションで付けましたが、結果はhCG 0
2022.9 9回目移植 自然周期 +1日(黄体期6日目)4AA→5AAと4CB→6CBの2個移植、SEETとエンブリオグルーとイントラとピシバとヘパリンをオプションで付けましたが、結果はhCG 0.4
2022.10 10回目移植 自然周期 2段階移植 +0.5日(黄体期3.5日目と5.5日目)4CCを初期胚代わり、4AB→5ABと4BC→5BCの2個移植、スクラッチとエンブリオグルーとイントラとピシバとヘパリンをオプションで付けましたが、結果はhCG 0.4

これまでPGT-Aは行わずに来ました。凍結胚が無くなったので、治療を続けるならまた採卵からになります。ですが、また同じ事の繰り返しになりそうで踏み切れずにいます。判定日の際の担当の先生に、何か新たに出来る事は無いですよね?とお聞きした所、強いて言えばPGT-Aをされても良いかもと言われました。ただ私の中でPGT-Aが私にとって本当に必要なのか納得しきれず、行うかどうか悩んでいます。

そこで先生にお聞きしたい事ですが、
①リプロの先生に、夫婦の染色体検査を行って、その後PGT-Aを必ずセットで行う必要はないと教えて頂いたのですが、夫婦共に染色体に異常が無ければ、染色体異常率は年齢相当と判断できますか。それとも、夫婦に染色体異常が無くても、PGT-Aを行うと受精卵の染色体異常率が高い方もいらっしゃるのでしょうか。
②PRP子宮内注入を1度行いましたが陰性でした。高額なので、再び行うかどうか悩んでおります。貴院でのPRP子宮内注入の実績としてはいかがでしょうか。松林先生は効果を実感されていますか。
③再び採卵となった場合、卵子の質をあげる為に出来る事はありますか。DHEA、VD、亜鉛は服用していく予定です。私のBMIが現在25.5あり、運動習慣もなく、仕事の帰りが遅いため睡眠時間は5〜6時間です。減量と生活習慣の改善に数ヶ月取り組んでから採卵すべきでしょうか。それとも、数ヶ月でも年齢が若い内に採卵を行った方が良いでしょうか。
④原因不明の着床障害とストレスとの関係はどの程度あるのでしょうか。金銭的な事もあり、正社員で仕事を続けながら治療をしてきましたが、仕事のストレスで妊娠から遠ざかっているのではと思う時が多々あります。仕事自体は体力仕事ではないですし、通院もなんとか調整して両立出来る仕事ですが、私が元々ストレス耐性が低く、学生時代から度々胃潰瘍や円形脱毛症、蕁麻疹、過呼吸発作を起こしているので、ストレスから受精卵を攻撃しやすい体になっているのではないかと心配です。これに対する治療、対策としては、イントラやピシバで出来ていると思って宜しいでしょうか。
⑤人工授精の時には、私の年齢だと6回陰性なら頭打ちなので体外受精にステップアップをと言われましたが、体外受精に頭打ちはありますか。私の年齢で10回陰性というのは、今後治療継続しても難しいと思われますか。新たな治療などはありますでしょうか。
⑥出来ればこのまま貴院で治療をしていきたいですが、金銭的に厳しいと感じています。不育の検査でひっかかっている場合、保険適用内の体外受精では妊娠は難しいでしょうか。
  

A 

①夫婦に染色体異常が無くても、PGT-Aを行うと受精卵の染色体異常率が高い方がおられます。したがって、前回の回答にも記載したように、一度PGT-Aを実施し、ご自分の染色体異常率を知ることは意味があります。異常率が年齢相当なら原因不明着床障害として対処することになりますし、異常率が高ければ正常胚を見つけるしかありません。

②リプロダクションクリニックでのPRP子宮内注入の妊娠率は約30%です。質問者さんのように色々手を尽くした方での成績ですので、治療のメリットはあると考えています。しかし、PRP子宮内注入で結果が出ていませんので、質問者さんにもう一度行うメリットはあまりないと思います。
③同じ状態で採卵や移植に臨むと、同じ結果になる可能性が高くなります。減量と生活習慣の改善に取り組んでから採卵した方が良いと思います(現在33歳、あるいは34歳でしたら、時間的猶予はあります)。
④原因不明の着床障害とストレスとの関係はありますが、妊活のストレスのみが関与します。仕事のストレスは関与しません(Gen Hosp Psychiatry 2004; 26: 398-404)。イントラやピシバは、NK活性高値の対策にはなりますが、ストレスの対策にはなっていないかもしれません。
⑤体外受精に頭打ちはあると思いますが、次のステップがないため、明確な指針が出されていません。参考までに、正常胚なら3回で頭打ちという論文が報告されています。

⑥保険適用内の体外受精は一度実施してみて良いと思います。他に実施してないことはやってみる価値はあると思います(例えば、新鮮胚盤胞移植)。

 

なお、このQ&Aは、約4週間前の質問にお答えしております。