米国の不妊症の実情:1995〜2019年 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、1995〜2019年の米国の不妊症の実情について横断調査したものです。

 

Fertil Steril 2022; 118: 560(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.05.018

要約:1995〜2019年の米国の不妊症の実情について、NSFG(National Survey for Family Growth)データによる横断調査を実施しました。なお、不妊症は妊活1年で妊娠が成立していないこととし、NSFGは15〜44歳の家族のある世帯の女性を対象にした調査です。対象者は53,764名であり、種々の因子と不妊症の関連を検討しました。不妊症の頻度は、最低値の5.8%(2006〜2010年)から最高値の8.1%(2017〜2019年)の幅がありましたが、統計学的な有意差を認めませんでした。多変量解析により、不妊症と有意な関連を認めたのは、女性の加齢、出産歴なし、少ない教育年数、低収入、非ヒスパニック系黒人、生殖医療へのアクセス不足でした。

 

解説:NSFG(家族計画調査)では、不妊症の頻度などの調査を行なっており、これまでにもいくつかの論文をご紹介しました。本論文は、1995〜2019年の米国の不妊症の実情について横断調査したものであり、不妊症の頻度に有意な変化はなく、加齢と出産歴との関連は以前から明らかになっていますが、教育レベルに反比例して不妊症が増えることを示しています。大変興味深いデータだと思います。

 

NSFGのデータについては、下記の記事を参照してください。

2021.8.28「妊娠するまでの期間は年々長くなっている!?

2013.7.11「☆パイプカットの是非

2013.5.2「真の不妊症の確率は?