卵巣反応低下の方へのFSH製剤投与量 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、卵巣反応低下の方へのFSH製剤投与量に関するランダム化試験です。

 

Hum Reprod 2022; 37: 1806(中国)doi: 10.1093/humrep/deac113

要約:2019〜2021年初回採卵を実施する661名(43歳未満、AFC<10)を対象に、FSH製剤スタンダード群333名150単位連日)と、FSH製剤増量群328名(AFC 1〜6個300単位連日、AFC 7〜9個225単位連日)の2群にランダムに分け、妊娠成績を前方視的に検討しました(なお、医師と患者には投与量は知らされており、ブラインド試験になっていない、オープンラベルランダム化試験です)。採卵1回での新鮮胚移植と凍結胚移植を合計した妊娠成績は、下記の通り。全てに有意差を認めませんでした。

 

        増量群   スタンダード群

臨床妊娠率   59.1%     57.1%

流産率      9.8%     14.4%

異所性妊娠率   0.3%      0.9%

出産率     49.4%     42.3%

 

解説:卵巣反応低下の方におけるFSH/HMG製剤投与量については、増量すべきであるとする意見と増量すべきではないという意見があり、結論は出ていませんでした。本論文は、卵巣反応低下の方へのFSH製剤投与量に関するランダム化試験を実施したところ、妊娠成績に有意差を認めなかったことを示しています。オープンレベルランダム化試験によるバイアスが懸念材料です。