エンブリオグルーの効能:メタアナリシス | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、エンブリオグルー(ヒアルロン酸添加培養液)の効能についてのメタアナリシスです。

 

Hum Reprod 2022; 37: 1451(イスラエル)doi: 10.1093/humrep/deac097

要約:2020年1月までに発表された、エンブリオグルーに関するランダム化試験15論文、4686名のメタアナリシスを行いました。ヒアルロン酸濃度0.5 mg/mLと対照群(0~0.125 mg/mL)を比較したものです。自己卵を用いた妊娠成績は下記の通り(有意差を認めた項目を赤字表示)(平均移植胚数:1個1論文、1.4個1論文、2.1~3.9個10論文、不明3論文)。

 

     オッズ比(信頼区間) 対象論文  論文の質

出産率   1.22(1.11〜1.34)  9論文    中

流産率   0.63(0.48〜0.84) 4論文    低

臨床妊娠率 1.11(1.04〜1.18)  13論文    中

多胎妊娠率 1.49(1.27〜1.76)  5論文    中  

 

一方、ドナー卵子を用いた場合には、妊娠成績に有意差を認めませんでした(1〜3論文)。

 

解説:エンブリオグルーは、移植の際の培養液の粘性を高め、丁度「のり(グルー)」のように胚を子宮にくっ付けれたらよいな、という発想の元に登場しました。本論文は、エンブリオグルーの効能についてのメタアナリシスであり、自己卵の場合に妊娠成績の有意な改善効果が認められます。ただし、多くの論文で2個以上の移植をしているため、単一胚移植での検討が望まれます。また、メタアナリシスに採用された論文では患者さんの集団にバラツキが認められるのが問題点となります。

 

下記の記事を参照してください。

2015.6.18「☆エンブリオグルーの効能:Cochrane reviewより