子宮の神経支配について | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、子宮の神経支配についての研究です。

 

Fertil Steril 2022; 117: 1279(フランス)doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.02.013

Fertil Steril 2022; 117: 1289(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.04.006

要約:妊娠21、24、26、27週に死産となった胎児の子宮及び子宮周囲の組織を摘出し、免疫染色により子宮の神経支配を観察しました(奇形や炎症のない死産児)。使用した免疫染色のマーカーは、S100(神経)、PMP22(体細胞末梢神経)、TH(交感神経)、VAChT(副交感神経)、nNOS(勃起神経束)、VIP(副交感神経+感覚神経)、NPY(交感神経+感覚神経)、CGRP(感覚神経)、RLN2(平滑筋収縮弛緩神経)です。子宮の神経は外側から内側へ入り込みます。子宮筋層の神経は密集していますが、子宮内膜の神経はまばらです(機能層に局在します)。神経は子宮頸部上部でで、子宮体部でです。子宮頸部の外側にある子宮傍結合組織に神経が豊富にあります。子宮では4種類の神経(TH、VIP、NPY、CGRP)が確認できました。

 

解説:本論文は、子宮の神経支配について、死産した胎児の子宮を用いて行なった初めての報告です。本研究は、子宮の疼痛緩和対策に応用される可能性があります(例えば、子宮内膜症の痛みや生理痛など)。地道な研究に頭が下がります。

 

コメントでは、胎児の神経支配は、(女性ホルモン作用を受けてからの)大人の神経支配と異なる可能性を指摘しています。