Q&A3341 保険治療では限界でしょうか  | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q AMH(2021年3月時点)3.86→(2022年5月時点)2.67
2021年は人工授精を行っており、2022年に保険診療での採卵周期を開始

妻37歳:子宮筋腫核出術を受け、残存筋腫の経過もみていただきながら、大学病院に通院中

夫40代:総運動精子数が1千万前後と人工授精がギリギリできる値で、体外受精・顕微授精を勧められました
夫婦ともに喫煙歴なし


採卵方法は、D5(カレンダーの都合)にエコーと採血で決まりました。エコーでのAFCが左右合わせて10個はあったこと、採血でFSH5.6、LH4.5、E2が36.8だったので、この結果から採卵個数は、PPOSなら10個以上採れるだろうということで、PPOSでスタートしました。
・ゴナールエフペン150単位*9日間
・デュファストン1日2錠*10日間
・(採卵72時間前)オビドレル
元々卵胞の発育が遅く、採卵3日前のエコーでは18mm以上の卵胞数は3個で、12mm以下が5個でした(人工授精をしていたときでも、D22まで卵胞が育たない事が多かったです)。ただ、採卵前の採血ではE2は1576あり、D16で採卵しました。採卵数は12穿刺し8個回収できましたが、M2卵が3個、M1卵が1個、GV卵が4個でした。M2卵の数は、年齢平均に比べたら少ないと言われています。M2卵が少ないことと精液所見が良くないのですべてICSIにしました。
・精液中の酸化ストレスが高いため、Zymotスパームセパレータで精子調整
・卵の状態を鑑み、授精しやすくするためCaイオノフォアを使用
M2卵の3個のうち4AAと4BBの胚盤胞が2個凍結できました。
移植前の子宮鏡で広範囲にマイクロポリープが散見されたため、ビブラマイシンを服用し次周期から移植をする予定です。
次周期以降に移植をして着床しなかった場合、次の採卵方法をせ変更することも考えています。採卵数が10個以上での妊娠率は高いというお話を耳にしたことがあり、採卵数が10個以下で且つ成熟卵が少ない場合、もう一度同じPPOSで採卵をしても意味がない気がしています。


採卵方法が身体にあっていなかった可能性はありますか。これは保険診療の限界でしょうか。もっと良い採卵方法はなかったものかと思っていますが、私の年齢では当然の結果でこれが保険診療の限界でしょうか。先生ご意見を教えてください。

 

A オビドレルを採卵の72時間前に打っているとしたら、全て排卵済みのはずですので、おそらく36時間前の記載間違いだとして以下に私の考えを述べます。

 

1 刺激薬剤の選択:リプロダクションクリニックでは、患者さんの年齢とAMH値から薬剤選択をしています。37歳、AMH 2.67であれば、富士150単位+フォリルモン150単位を連日自己注射で行います。ゴナール150単位の連日注射では若干不足しているものと考えますが、保険診療の範囲内では、同系統の薬剤の併用ができません。

2 排卵抑制法の選択:PPOS法は必ずしも全ての方に適切ではありませんので、私なら次回はアンタゴニスト法で排卵抑制を行います(保険診療でも実施可能)。

3 トリガーの選択:未熟卵が多いので、オビドレル単剤では不十分だと思います。成熟対策として、ダブルトリガー(ブセレリン+HCG10000単位)を採卵の34〜36時間前に使用をお勧めしますが、保険診療の範囲内では、ダブルトリガーは認められない可能性が高いです。

4 採卵数:一つの卵胞からE2は200程度(〜500)出ますので、採卵決定時のE2は1576で8個卵回収は妥当なところです。

5 凍結胚:4AAと4BBの胚盤胞が2個凍結できているのは、成熟卵が3個だったことを考えると上出来だと思います。

 

したがって、今回採卵での大きなマイナスポイントは未熟卵が多かったことです。成熟対策をしっかり行って次回の採卵するのが良いでしょう。つまり、自費診療になります。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。