Q&A3108 ☆判定日の時期と経過について | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 地方在住、41歳


一人目も体外受精で妊娠出産し、現在二人目希望で通院中です。一人目のときから胚盤胞は得られやすいのですが、グレードのいい胚を移植してもなかなか妊娠しないという現状があります。子宮鏡検査や、血栓関連、自己抗体などは調べ、原因不明と言われています。一人目は何度か移植して、原因は特定できてないもののプレドニンとアスピリンを処方され、妊娠しました。

二人目の治療はこれまで、2つの病院で5日目胚盤胞を計5回移植しました。そのうち3回は市販の妊娠検査薬(感度50mlU)でBT5〜10くらいまで陽性で、その後判定の線が急に薄くなり、通院している病院の判定日(BT14)には完全に陰性に線が出なくなりました。

今まで通った2つの病院とも、判定日はBT14で、尿で自宅で自己判定して、電話で報告するという方針です。ですので、医師には「陰性でした」の報告のみです。しかし、いろんな人のブログなどを見てみると、BT9〜10で、βhCGの採血をしている病院や、もっと早いタイミングで採血して着床したか判定している病院も多いように感じます。

 

そこで質問ですが、

①胚盤胞移植後、βhCGの値をフォローすることに、意味はあるのでしょうか、無いのでしょうか。着床不全の原因を探る有用な情報にはならないのでしょうか。
②全くβhCGが出ないより少しでも出た方が、将来の妊娠の可能性があるような気がして、患者としては、次の治療への勇気をもらえるような気がしているのですが、その考えは間違っていますか。

③病院によって移植後のβhCGの値をこまめにフォローするところと、しないところは、どのような考え方の違いがあるのでしょうか。

 

A リプロダクションクリニック では、BT11のβhCG採血で妊娠判定しています。当院では、βhCG 5.0で出産された方が東京でも大阪でもおられますので、陽性判定を20以上、判定保留を5〜20としています。判定日が早く、BT7のβhCG採血で妊娠判定されているクリニックもありますが、この場合にはBT11のβhCG 5.0の方は陰性判定として処理されることになります。これはある意味勿体無いことだと思います(別の例として、CC胚盤胞を廃棄されるクリニックもありますが、CC胚盤胞で出産される方もおられますので、赤ちゃんになれる可能性のある胚を廃棄するのは非常に勿体無いことだと思います)。逆に判定日が遅い場合には(BT14)、妊娠ホルモンが出てから下がったケースを見逃すことになります。βhCGは胎盤しか作らないホルモンですので、わずかでも出ていれば、着床したことを示します。着床したのかしなかったのかを知ることはメリットがあることですので、遅すぎる判定は着床したか否かの判断ができません。つまり、早すぎる判定(BT7)は赤ちゃんになれたかもしれない妊娠を早期に放棄することになり、遅すぎる判定(BT14)は着床したかも知れない事実を見逃してしまうことになります。このため、リプロではその中間のBT11を判定日にしています。

 

βhCGの値をフォローする意味はあると思います。BT7のクリニックでは、BT14で再判定しているようですが、BT11程度の再判定の方が妊娠経過がよりはっきりすると思います。当院ではBT11の判定で判定保留の場合はBT13〜14で再判定をしています。

②少しでもβhCGが出てから低下するのは広い意味で不育症になり、全く反応が出ない着床障害とは異なります。不育症と着床障害はその後の対策が異なってきます。

③早い判定の場合には再判定が必須になるため通院日数が増えます。また、早い判定を行うと広い意味での不育症の方が増えます。通院日数の増加を許容するのかしないのか、不育症に対応するのかしないのかなど、それぞれのクリニックのポリシーによって判定日の時期とこまめにフォローするかどうかが異なってくるのだと思います。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。