本論文は、未受精卵の細胞質の評価がその後の胚発生と妊娠成績に関与することを示しています。
Fertil Steril 2021; 116: 431(米国、オーストリア)doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.02.022
Fertil Steril 2021; 116: 348(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.05.086
要約:2017〜2019年に採卵した2690個の高齢女性の卵子(平均年齢41歳)の細胞質のパターンを4つ(きめ細やか、中央のみ、全体に分散、不均一)に分類し、その後の胚発生と妊娠成績に及ぼす影響を後方視的に検討しました。イメージとしては、きめ細やか(砂つぶ状)、中央のみ(リング状)、全体に分散(岩石状)、不均一(砂つぶ状+岩石状)となります。
受精率は下記の通り(きめ細やかと比べ、有意差ありを赤字表示)
きめ細やか 中央のみ 不均一 全体に分散
2PN 91.8% > 83.9% > 77.9% > 54.8%
0PN+1PN 4.4% < 12.2% = 11.8% < 26.0%
3PN以上 3.7% = 3.9% < 10.3% < 19.2%
妊娠成績は下記の通り(きめ細やかと比べ、有意差ありを赤字表示)
きめ細やか 中央のみ 不均一 全体に分散
妊娠率 10.7% > 8.4% = 8.7% > 4.6%
出産率 8.9% > 5.7% = 6.2% > 3.0%
なお、細胞質のパターンは、年齢、AMH、BMI、FSH基礎値、AFC、主席卵胞径、不妊要因、HMG製剤使用量、胚のグレードのいずれとも有意な関連を認めませんでした。
解説:未受精卵の細胞質の評価は、1997年に初めて報告され、その後数件の論文が発表されています。本論文は、未受精卵の細胞質の評価とその後の胚発生と妊娠成績に及ぼす影響を後方視的に検討したものであり、胚のグレードと独立した因子として受精率や妊娠成績との有意な関連を示しています。今後の検討が必要ですが、胚のグレードと独立した因子として受精率や妊娠成績を推測するツールになるのではないかとしています。つまり、同じグレードの胚があった場合に、受精前の卵子の細胞質のパターンを加味して移植胚の順番を考えることになります。
コメントでは、未受精卵の細胞質の評価については初めての試みではないけれども、その後の胚発生と妊娠成績を検討したのは初めての報告である事を評価し、今後の発展に期待を寄せています。