Q&A3050 内膜が厚くならず移植できません | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 男性不妊により、40歳で顕微受精&ホルモン補充周期に5日目胚盤胞4AA移植で妊娠、41歳で第1子を出産しました。

 

第2子を希望して42歳から不妊治療を再開し、顕微受精→ホルモン補充移植を繰り返しておりますが、もともと子宮内膜が厚くならず(通っているクリニックの排卵前の内膜厚の基準は8mm)、移植はよくて3〜4回に1回しかできません。43歳時はほぼ1年、キャンセル続きでした。44歳6ヶ月で一度8mmで移植して着床しましたが、心拍確認後10週で流産、Xモノソミーでした。移植した胚はすべて4AA、3AAの5日目胚盤胞です。45歳0ヶ月で治療を再開しましたが、一度も移植に至りません。以前よりさらに内膜が厚くならないどころか、回を追うごとに7.5mm、7.0mm、6.5mm、6.0mmと薄くなっていきます。ホルモン補充していても卵胞が育つ周期が目立ってきました。自然周期でもトライしましたが、排卵前6.8mm、黄体ホルモン補充後、排卵後移植直前で5.4mmでした。44歳3ヶ月の時にで不育症クリニックでも検査を受け、ビタミンE、D、バイアスピリンを服用していますが、今のクリニックの先生はこれ以上打つ手がないとおっしゃいます。

①ホルモン補充の方法、または薬剤を変えると内膜が多少でも厚くなる可能性はあるでしょうか。これまでのホルモン補充方法の基本は「エストラーナテープ2枚または3枚スタートし、ルテウム膣錠」です。流産前はエストロゲンが高くなりすぎない方が内膜が厚くなる傾向があったため2枚スタート、流産後は卵胞が育つ周期が多いので3枚スタートも実施しています。
②ホルモン補充は諦め、自然周期を目指した方がいいでしょうか(自然周期でも7mm未満です)。
③排卵前の内膜厚は先生でしたら何mmあれば移植と考えられますか。
④ホルモン補充を続けた場合、レセプターが反応しなくなるとの記事を読んだことがあるのですが、本当でしょうか。その場合、お休み周期を入れると改善することはありますか。
⑤出産まで至った経験のあるクリニックですが、転院して相談した方が良いでしょうか。

 

A 

①ホルモン補充の方法、または薬剤を変えると内膜が多少でも厚くなる可能性はありますので、様々な薬剤を試してみたいところです。その他、G-CSF子宮内注入、シルデナフィル膣内挿入(50mg/日)、アルギニンサプリ(大腸送達アルギニンなら900mg/日、通常のアルギニンでは6g/日)も考慮してください。

②ホルモン補充周期の方がやりやすいですが、自然周期の方が内膜が厚くなる方もおられますので、こちらも卵胞発育の薬剤を変え色々試してみてください
③世界的には、7mm以上を基準にしていることがほとんどであり、リプロダクションクリニック でもそのようにしています。しかし、7mm未満でも妊娠例は多数報告されていますので、薄い内膜でも移植にチャレンジすることも考慮してください。
④ホルモン補充を続けた場合、レセプターが反応しなくなるという話に根拠はありません。
⑤手詰まり感が否めませんし、他の選択肢もないようですので、転院をお勧めいたします。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。