Q&A3002 正常胚移植で先天性心疾患 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 夫47歳、妻45歳、今年の1月に正常胚移植で女の子を授かることがでました。

子供の先天性心疾患と今後のことについて質問です。
①子供は先天性の疾患「両大血管右室起始」「肺動脈狭窄」をもっているが、スクリーニング検査の影響の可能性はあるのか。また、着床した胚盤胞は正常胚だが、その範囲の幅が大きい(異常値に近い正常という意味と理解してます)という話があったが、その辺も影響している可能性があるのか。
②高齢ではあるが第二子を希望。帝王切開だったため1年間は妊娠不可だが、採卵するのは問題ないか(現在ミルクで育てている)。
③第二子の治療をした場合、前回のように毎回スクリーニング検査を実施するのは金銭的に無理。過去の結果を鑑みて、スクリーニング検査に出さずに複数の胚盤胞を戻すという選択肢はあるか。ある場合、その判断基準はあるか(年齢とか過去の成績とか)。個人的には、2回ほどスクリーニング検査を実施して正常胚ができなかった場合は検査せず胚盤胞を複数戻せたらなぁと考えています。

過去7回の採卵結果は下記の通り
採卵1回目 43歳 採卵数: 9、胚盤胞3、正常胚1、凍結時:6AB、3AB、4BB
採卵2回目 43歳 採卵数:12、胚盤胞6、正常胚0、凍結時:5BA、4BC、3AA、3BB、3CB×2
採卵3回目 43歳 採卵数:11、胚盤胞3、正常胚0、凍結時:5BB、4CA、3BB
採卵4回目 43歳 採卵数:15、胚盤胞2、正常胚0、凍結時:4CC、3BC
採卵5回目 44歳 採卵数: 0
採卵6回目 44歳 採卵数:18、胚盤胞2、正常胚0、凍結時:3BB、3BC
採卵7回目 44歳 採卵数:12、胚盤胞4、正常胚0、凍結時:4AB、3BB、3BC、3CC
 

A 

①「両大血管右室起始」「肺動脈狭窄」と、胚スクリーニング検査実施との関連についての報告はありません。先天性心疾患は染色体異常やモザイク胚によるものではなく、偶発的に生じるものと考えられます。
②採卵するには問題ありません。
③胚スクリーニング検査に出さずに複数の胚盤胞を戻すという選択肢はあります。例えば、正常胚の確率が33%の方は検査未実施胚を3個移植すれば1個正常胚があり出産可能となり、正常胚の確率が25%の方は検査未実施胚を4個移植すれば1個正常胚があり出産可能となります。しかしながら、質問者さんの場合、正常胚は1/20(5%)の確率ですので、理論的には20個移植ということになり、現実的ではありません。なお、正常胚率が判明した場合には、胚盤胞移植をする必要はなく初期胚移植で構いませんので、移植のチャンスが大きく広がります。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。