本論文は、FSHサージが有効か否かについて検討したものです。
Hum Reprod 2020; 35: 1411(中国)doi: 10.1093/humrep/deaa087
要約:2012〜2013年に採卵を実施する方732名を対象に、ロング法で刺激し、トリガーにFSH 450単位+HCG 6000〜10000単位を用いる群と、FSHなしのプラセボ+HCG 6000〜10000単位を用いる群にランダムに分け、妊娠成績を前方視的に検討しました(ダブルブランド)。なお、42歳以下、BMI 17〜28、ベースラインのFSH < 12の方を対象とし、3回以上の胚移植反復不成功、子宮形態異常、卵管水腫、4cm以上のチョコレート嚢胞の方を除外しました。結果は下記の通り(有意差は認めませんでした)。
トリガー FSH+HCG HCG
臨床妊娠率 ITT解析 52.7% 51.6%
PP解析 54.7% 53.7%
出産率 ITT解析 44.5% 43.8%
PP解析 46.2% 45.5%
また、年齢、BMI、採卵数別にサブグループ解析でも同様に有意差を認めませんでした。
解説:生体内では、LHサージの際にはFSHサージも同時に生じていますので、LH+FSHの同時投与によるトリガーがより生理的ではないかとする考えがあります。しかし、この件に関する検討は極めて少ないため結論が得られていませんでした。本論文は、FSHサージが有効か否かについて検討したダブルブランドのランダム化試験であり、FSHサージ(FSH投与)は無効であり、HCG単独投与で十分であることを示したものです。
下記の記事を参照してください。
2014.10.17「FSHの変動と排卵周期の関係」