☆子宮卵管造影の造影剤は赤ちゃんの甲状腺機能に影響しない | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、子宮卵管造影の造影剤は赤ちゃんの甲状腺機能に影響しないことを示しています。

 

Hum Reprod 2020; 35: 1159(オランダ)doi: 10.1093/humrep/deaa049

要約:子宮卵管造影実施後6ヶ月以内に妊娠された369名を対象に、油性造影剤(214名)と水溶性造影剤(155名)の2群に分け、新生児スクリーニング採血の甲状腺ホルモンのデータを参照し、後方視的に検討しました(H2Oilスタディ、同意が得られた分析結果はそれぞれ76名と64名)。子宮卵管造影で使用した造影剤のヨウ素含有量は、水溶性造影剤(2.5g)より油性造影剤(4.3g)で有意に高くなっていましたが、赤ちゃんの甲状腺ホルモン濃度には有意差を認めませんでした(T4 90.0 vs. 87.0 nM)。

 

解説:日本など東アジア諸国から油性造影剤による子宮卵管造影で赤ちゃんの先天性甲状腺機能低下症が生じると報告されています。一般に、油性造影剤は水溶性造影剤よりヨウ素含有量が多くなりますので、その分も懸念されます。しかし本論文は、子宮卵管造影の造影剤は赤ちゃんの甲状腺機能に影響しないことを示しています。もちろん、今後の大規模な研究が必要ですが、現段階で油性造影剤の使用を控える必要はないとしています。

 

下記の記事を参照して下さい。

2020.2.7「子宮卵管造影検査の造影剤:油性or水溶性

2019.2.20「Q&A2114 造影剤の残留について

2019.2.19「Q&A2113 油性造影剤による影響は?

2018.12.4「Q&A2032 甲状腺機能低下症で油性造影剤は?

218.10.19「☆卵管造影:水溶性造影剤vs.油性造影剤

2017.12.26「Q&A1683 卵管造影の造影剤と甲状腺

2016.6.8「Q&A1115 ☆造影剤で甲状腺機能異常?