Q&A2603 透明帯除去培養法について | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 体外受精反復不成功の複数カップルを対象に、受精直後に透明帯を除去することで正常に受精卵が育ち妊娠に至ったとのニュースを見ました(NHK NEWS WEB)。

①この方法に関する先生のご見解をお聞かせください。
②受精直後に透明帯を除去することで考えられるリスクはありますか。
③仮にこの技術を実施した後にPGT-Aを行うことは可能でしょうか。

④この方法が導入される可能性はありますか。また、導入されるとしたら、いつぐらいになりそうでしょうか。
 

A 

透明帯は受精卵の周囲を覆うタンパク質の層であり、受精卵が分裂していく際に細胞を守るために必要であると考えられていました(透明帯を早期に除去すると個々の細胞がバラバラになってしまい、うまく培養できないとされていました)。透明帯が細胞分裂を邪魔しているという発想は極めて斬新であり、透明帯を全て除去する本法は誰もが思いもよらない画期的なものです。逆転の発想とも言えるでしょう。しかし、本当にこのような現象が生じるのか否かについては、他施設からの追試が必要です。
本法は、受精卵の細胞自体にダメージはなく、受精卵への悪影響はないものと考えます。ただし、個々の細胞がバラバラになってしまわないかという懸念材料はあります。
③そもそもPGT-Aは透明帯の外側に脱出した細胞を採取しますので、本法はむしろPGT-Aが実施しやすくなると考えます。
④当院では新しい治療法に関して、常勤医全員でディスカッションを行い、導入の是非を決めています。本法に関する論文が発表されるようですので、内容を検討した上で導入するか否か決めたいと思います。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。