Q&A2576 前院で5回移植、転院後着床の窓のズレが判明 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 前院で2回採卵、5回移植し、いずれも陰性に終わり、リプロ東京に転院しました。
オプション検査を一通り行い、先日6回目(リプロでは初)の移植を行いましたが、残念ながら陰性に終わりました。今後の治療について、先生ならどうお考えになるかお聞かせください。

基本情報
・現在27歳、ART治療開始時は26歳
・夫は32歳、ART治療開始時は31歳
・22歳の時に自然妊娠、8wにて中絶経験があります
・男性不妊は全くなし。
・AMH 1.99

前医
・採卵1回目 ショート法、顕微と体外半々➝10個採卵9個受精、6個の初期胚獲得
移植① 初期新鮮胚/ホルモン補充➝陰性(<2.0)
移植② 初期胚/ホルモン補充周期➝陰性(<2.0)
移植③ 胚盤胞A/ホルモン補充周期/ユベラ服用➝陰性(<2.0)
移植④ 胚盤胞A×2個/ホルモン補充周期/スクラッチ法/ユベラ・バイアスピリン服用➝陰性(<2.0)
※ガードナー分類を使っておらず、胚盤胞はAorBのみの評価でした。
・採卵2回目 ショート法、すべて体外受精➝12個採卵9個受精、5個の初期胚獲得
※胚盤胞凍結の予定が、質が悪かったため72hで凍結
移植⑤ 初期新鮮胚×2個/ホルモン補充周期/ユベラ服用➝陰性(<2.0)

リプロ東京
ビタミンD欠乏、耐糖能異常あり、抗リン脂質抗体や血液凝固などなし
ERPeakで着床の窓ズレ判明(+1.0移植推奨)、子宮収縮有り(ダクチル3T/day)
慢性子宮内膜炎、子宮鏡検査は問題なし、他院にてTh1/Th2バランス, Treg, Th17問題なし。
ビタミンDのサプリと、ラクトフェリンのサプリは服用しています。また、糖質制限はできる範囲で頑張っています。
・採卵3回目 黄体フィードバック法/顕微と体外半々➝10個採卵7個正常受精、1個の初期胚、5個のDay5胚盤胞獲得(4AA, 4BA, 4BA, 3BA, 3BB)
※ありがたいことに、リプロに転院してから、卵の質はぐーーーんと改善しました。培養技術の高さに驚きました。ありがとうござます。
移植⑥ 体外由来4BAの5day胚盤胞(移植直前は5BA)/ホルモン補充周期/SEET法/6日目に移植➝陰性(<0.3)

今後の治療について、リプロの先生からは【自然周期での2段階移植】を勧められました。5年前ですが自然妊娠の経歴があること、自然周期移植の経験がないこと、が理由です。概ね私も賛成でしたが、せっかくERPeakで窓ズレがわかったので、【窓ズレ調整した上で、ホルモン補充周期の2段階移植】でも良いのかと思っています。(悩み中ですが、おそらく回答いただける頃にはどちらかで進めているかと思います)

①先生ならば、今後の治療方針はどのようにお考えになりますか。化学流産すら経験がありません。全く着床しません。大きな原因は窓ズレとお考えになりますか。
②5年前の自然妊娠歴は、治療をする上で、加味した方がよいでしょうか(自然周期移植を何度か試したほうがよいと思われますか)。自然周期移植の場合、ホルモン補充周期のERPeakの結果は参考にならないと思いますが、5日目移植、6日目移植、どちらで行った方がよいでしょうか。
③これ以上陰性が続く場合、着床前診断を検討した方がよいですか。年齢(27歳/32歳)や、流産歴がないことをふまえると不要と思っていましたが、これ以上やれることが思いつきません。受精卵の染色体異常率は、年齢に相関すると考えてよいですか。AMHは関係ないですか。
 

A 原因不明不妊の対処法に一定のものはありませんので、それぞれの医師の経験に基づくプランを展開することになります。プランの選択肢はだいたい同じになりますが、どのプランを最初にするかは意見が分かれます(正解はありません)。

 

①前医で実施した移植では着床の窓のズレを全く考慮していませんので、私はカウント外とします。着床の窓のズレが判明して1回しか移植していませんので、私なら、もう一度ホルモン補充周期で移植してみたいと思います。その際に、子宮内膜のスピードだけではなく、受精卵(胚盤胞)のスピード(ステージ)も考慮して移植することを提案します。
②自然妊娠と凍結胚移植の大きな違いは、自然妊娠の場合は全て体内で行われるため受精卵と子宮の情報伝達により窓を自然に調整している可能性がありますが、凍結胚移植では急に受精卵が子宮に来てしまうため調整する事が出来ないのだと私は推測しています。しかし、自然周期移植を行った事がないのであれば何度か試してみる価値はあると思います。自然周期移植の場合、ホルモン補充周期のERPeakの結果は参考になりませんが、私なら6日目移植からトライします。
③現在の年齢で結果が出ていないのは不自然です。
受精卵の問題か着床の問題のどちらかあるいはその両方が考えられます。27歳での染色体異常は27%ですので、一般的には受精卵の問題ではないとされますが、20代でも染色体異常が高率であることもあるようですので、着床前診断(PGT-A)の実施は視野に入れておくのが良いでしょう。なお、受精卵の染色体異常率は、年齢に相関し、AMHには相関しません。PGT-Aについては日本産科婦人科学会の認可待ちになります。
 
下記の記事を参照してください。
 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。