Compassionate transfer:ASRMの見解 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Compassionate transfer(哀れみ深い移植)については、2019.5.30「Compassionate transferとは」の記事で初めてご紹介しました。前回は欧州生殖医学会(ESHRE)のオピニオンだったのですが、本論文は米国生殖医学会(ASRM)の倫理委員会による見解です。

 

Fertil Steril 2020; 113: 62(ASRM)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.10.013

要約:Compassionate transferとは、余剰胚を妊娠しない時期(月経中など)や妊娠しない場所(膣など)に移植する処理方法です。本法は患者さんの個人的な好みや価値観の上に成り立っており、患者さんの自由と自己決定権をどこまで尊重するかという判断が必要です。しかし、医療者側にも自己決定権があり、医学的に意味のない行為については、たとえ患者さんの希望が強かったとしても、実施の義務は生じません。各施設において、本法に関するポリシーを明記し、実施の際には十分なインフォームドコンセントを得る必要があります。

 

解説:余剰胚の処理を自分の身体で行うという本法は、宗教的なバックグラウンドが弱い日本人にはそぐわないと思いますが、海外ではこのような考えもあるようです。ただし、頻度が多いわけではなく、ASRMとしても中立的な立場をとっています。