Q&A2469 単一胚盤胞移植でDD双胎!? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q ホルモン補充周期で胚盤胞一個移植をしてDD双胎の一卵性双生児を出産したものです。妊娠周期は性交渉なしのため、胚盤胞でDD双胎になった珍しいパターンです。私は37週で産み、双子は体重差が1キロほどありました。DD双胎なので差があっても問題ないと言われていましたが、1人は1600グラム程で週数の割にかなり小さく、SGA児になると言われ、今後身長の発達が正常かフォローが必要と言われました。


1 静岡産科婦人科学会雑誌 2013; 2-1: 16
2 2015.7.26「胚盤胞移植でDD双胎

3 リプロを卒業された方のアメブロでも胚盤胞一個移植でDD双胎になった

を読みました。

①今後は胚盤胞移植でも、今までの膜性の説が変わってきますか。
②なぜ一卵性なのにこんなに差が出たのでしょうか。

 先生からははっきりとした原因は不明。一卵性のため片方だけ染色体異常は考えにくい。胚盤胞DD双胎は珍しいし、2つに分かれた時点で大きさに差があったのでは。胎盤かへその緒に問題があったのかも。双子という時点で、小さく産まれる可能性が高いことを言われました。分割の時点で大きさに差が出ることはよくありますか。その場合、小さくてもちゃんと着床し人間の身体が形成されるのだなと不思議に思いました。
③この質問は生殖医療の先生にする質問ではないかもしれませんが、SGA児は成長ホルモンを投与しなくても、成長曲線に入る可能性はどれくらいありますか。

 

A 

①理論的に、単一胚盤胞移植でDD双胎(2絨毛膜性2羊膜性)は起こらないとされていました。受精後3日目まで(桑実胚未満)に分裂した場合にDD双胎になると考えられていましたので、胚盤胞移植の段階ではすでに細胞が2つに分かれているはずの時期だからです。しかし、最近胚盤胞移植でのDD双胎の報告が散見されます。胚盤胞が完全に2個に分離するのを顕微鏡で確認したとの報告もありますので、教科書に記載されていたかつての常識が誤りであった可能性が高いと思います。

②③全て想像の域を出ませんが、分離した時点で大きさに違いがあった可能性、着床した場所の血流が大きく異なる可能性、胎盤や臍帯の血流が異なる可能性、何でも考えられます。なお、分離した後の細胞は子宮内にあるため、それを確認する方法はありません。また、小さく生まれた赤ちゃんは、通常徐々に発育が追いついていく(キャッチアップ)のが普通ですので、経過をみる以外にないでしょう。珍しいケースで確率を論じるのはナンセンスです。

 

下記の記事を参照してください。

2013.8.2「ふたごは寒い地域に多い?

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。