最近読んでよかった本 その86 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

最近読んでよかった3冊を簡単に紹介します。

なお、紹介の順番は五十音順にしています。

 

 

「悪徳の輪舞曲」中山七里

少年犯罪の後更生し弁護士となった「御子柴礼司」シリーズ第4弾。今回の弁護の相手は御子柴の実の母親である「郁美」。郁美は、再婚した夫を自殺に見せかけて殺害した容疑で逮捕されたのだ。接見した御子柴に対し、郁美は容疑を否認。犯罪者の家族として30年間耐え続け、逃げるように各地を転々とした母「郁美」と妹「梓」の怒りの矛先は御子柴。実母が相手となると冷徹な御子柴もペースを乱され、いつもの法廷戦術にもキレがない。これまであざやかな弁護術と法廷戦術で逆転劇を演出してきた御子柴も今回はいよいよダメなのか?絶体絶命のピンチに驚くべき隠し球で勝負!中山七里さん、本当にお上手です。

 

 

「殺人の門」東野圭吾

田島和幸は開業歯医者の息子として裕福な暮らしをしていたが、祖母の死が母の殺人によるものだという噂が流れ、人生が暗転していく。両親の離婚、父の廃業、転校先でのいじめ、、、ある時、この状況は全て小学生からの友人である倉持修が仕組んだものだと知り、田島は倉持に殺意を抱くようになる。しかし、倉持の巧みな話術に惑わされ、殺意を抱きながらも、なかなか実行に移すことができないで悶々とする日々。大人になってからも、事あるごとに倉持は田島につきまとう。「奴のせいで、私の人生はいつも狂わされてきた。でも、私には奴を殺すことができない。殺人者になるために私には一体何が欠けているのだろうか」。嘘で塗り固められた倉持の言動からは、何が真実なのかわからない。殺意から殺人へ実行される瞬間とは、一線を越える(=殺人の門)には何が足りないのか。心の闇に潜む殺人願望を描く作品です。白夜行と幻夜はとことんまで悪女を追求した作品であるのに対し、本書は極限まで悪男を描いた作品です。

 

 

「幽霊人命救助隊」高野和明

自殺の結果、天国とも地獄とも言えない場所に集結した浮かばれない4人の霊。神様が降り立ち「これから49日以内に、自殺志願者100人を救いなさい。そうすれば、君達は天国に行ける」と告げる。その4名は、年老いたヤクザ、中小企業経営者、家事手伝いの若い女、浪人中の青年。彼らが「幽霊人命救助隊」なのだ。自殺の理由は様々、死に方も様々。4名は自殺志願者の思いを留めさせる使命を果たしながら、自らの自殺の意味を考える。100名いれば当然、自分たちと同じ境遇の人もいる。しかし、助けない訳には行かない。そうやって説得を続けるうちに、4人の救助隊は気付く。自殺するまでに追い詰められた人々は、今日の不幸を嘆く余り、それが永遠に続くものだと思い込んでいる。かつて、生前の自分たちもそうだったように。しかし、神ならぬ身の人間に、明日のことなどなぜ分かる。今日の悲しみが明日も続くと、誰が断言出来ようか。そう頓悟した時、救助隊の一人はしみじみ呟く「未来が定まっていない以上、すべての絶望は勘違いである」と。世間の荒波に弄ばれた登場人物たちを通じて、人生を考え直してみてはいかがでしょうか。悲しい話の中にもほっこりする作品です。