☆PCOS診断を下した際のメリットとデメリット | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)診断を下した際のメリットとデメリットについて患者さんの気持ちを調査したものです。

 

Hum Reprod Open 2019; 4: hoz026(オーストラリア)doi: 10.1093/hropen/hoz026. eCollection  2019.

要約:2018年にPCOSと診断された18〜45歳の女性26名を対象に、面談(直接あるいは電話)を実施しました。PCOS診断は患者さんの自己申告によりますが、それぞれ医師から重症度を聞かされています。これまでの煩わしい症状の原因が不明だった方は、原因が明らかになったことにより安心感が得られ、これからの健康について前向きになりました。しかし、これまでの症状が軽症だった方は、病名の宣告に大きなショックを受け、長期にわたるリスクに対して不安になりました。症状の程度によらず、多くの方は将来の不妊リスクについて不安になり、人生設計を変更するかどうか悩みました。しかし、時間の経過につれ、多くの方は次第に前向きになって行きました。

 

解説:PCOSは時代とともに診断基準が緩く(甘く)なっており、軽症の場合でも診断が下るようになっています。本論文は、PCOS診断を下した際のメリットとデメリットについて患者さんの気持ちを調査したものであり、軽症の方は大きなショックを受けますが、次第に前向きになっていくことを示しています。本論文の著者は、適切な時期に適切な表現で診断を告げることの重要性と、正しい情報を提供し、カウンセリングをしっかり行うことが重要であるとしています。

 

同様な問題は医療には必ずあります。例えば癌や難病の診断の宣告は極めて重要で、正しい情報とカウンセリングが必要です。PCOSのように命に関わらない疾患では、病気であるというよりも病態である(そのような状態である)ことを意識してもらうことが重要だと考えます。

 

下記の記事を参照してください。

2019.11.13「PCOSの方は妊娠しにくいのか?

2019.10.12「☆PCOSの程度は食事依存性!?

2018.8.25「PCOSの家族の糖代謝:メタアナリシス