嬉しい報告:48歳で出産、リプロ東京のヘパリンが奏効!? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

 松林先生、ご無沙汰しております。2016年にリプロ大阪で各種不育検査を受けてヘパリン処方され、その後リプロ東京でお世話になりました。移植は他院で行いましたが、貴院でヘパリン、バイアスピリン、ダクチルの必要性をご判断いただき処方を受けて、妊娠を継続することができたと考えています。仕事がハードなので、夜も毎日会社のトイレでヘパリンの注射をこわごわ一人で打っていた日が思い出されます。

 2018年8月(47歳の終わり)に2015年に採卵・凍結した初期胚を2個移植しました。リプロ東京で竹内先生や土信田先生にお世話になり、ヘパリンを処方され、まずは16週まで継続。ただ、その時点の採血で、第12因子が基準の60%を満たせず(56%どまり)その後もヘパリンを続けるかどうか、様子をみる必要性が生じました。その後の採血で基準を満たす結果となり、リプロ東京を卒業。超高齢の初産で、妊娠継続できるのか、妊娠糖尿病や早産などあらゆる可能性を危惧していましたが、ありがたいことにもともと丈夫なせいなのかなんなのか、臨月に高血圧気味になっただけで、2019年春に3000gを超える子どもを出産することができました。逆子が治らず、帝王切開でした。ヘパリンを使用していたため、産院をどこにするか悩みましたが、土信田先生が「
△△区なら○○病院がありますね。当院から○○病院を産院に選ぶ方も多いですよ」といったアドバイスを受け、そこにしました。


 リプロで不育検査を受ける前は化学流産を1回しただけで、あとは着床もしませんでした。しかし、ヘパリンを使った後の2017年、残念ながら心拍確認前の稽留流産とはなってしまいましたが、初めてきちんと妊娠をすることができました。2018年の時は、年齢が年齢だけに、いつも松林先生が書いていらっしゃる「ニュートラルな気持ち」に自然になれていました。つまり、超脱力状態で気合ゼロの移植だったのです。凍結期限来てまたお金かかるし、はやく期限きれるものから移植しよう、という気持ちでした。これまで試したことがなかった、初期胚2個移植に初めてトライした回でもありました。仕事多忙のためホルモン補充周期でした。

 移植した病院の医師はヘパリン反対派であり「自己責任でお願いします」と私は言われていました。私は受けて立とうと思い(笑)、「もちろんです。自己責任で行います」とはっきり伝えました。先生も、超高齢患者がもがいているので好きにさせておこうと思われたのかもしれませんが(私の推測です、笑)、その、好きにさせていただけたおかげで、出産までこぎつけたのではないか、と思っております。もちろん、胚の質そのものや、初期胚2個移植の奏功、移植した病院の培養液が自分には合っていたのではなど、様々な要因が組み合わさって、今回の出産にいたったのだと思います
し、移植した病院にも感謝しています​​​​​​。

  本当にありがとうございました。いまは育休中で、来年の職場復帰に向け保活中です。他院にまだ凍結胚が2つあるのですが、様々な要素を踏まえると今後の妊娠・出産を念頭に置いた移植には踏み出さないかもしれません。心は決まっていますが、胚も生命と考えているだけに迷っています。ある意味、わたしの不妊治療はまだ終わっていないのかもしれません。

 お礼メールのついでに恐縮ですが、松林先生のブログに向けて質問がございます。「最近出産しました。凍結余剰胚がありますが、経済・年齢的な要因などを考えると、今後の移植にはなかなか踏み出せません。しかし、廃棄するのは心が痛いです。こうした余剰胚の使い道、廃棄以外にどんな方法がありますでしょうか」5月ごろのブログで、たしかアメリカあたりではそうした余剰胚を廃棄したくないご夫婦に対し、あえて妊娠しない周期に移植する方法が採用されている、といったような記事が出ていたと記憶しています。最終的に自分のおなかにかえるなら、少しでも胚も救われるのかな、と感じます。ご多忙のところすみませんが、先生のご見解を頂戴できましたら幸いです。

 

コメント:ヘパリンを使い始めてから陽性判定が出ていますので、ヘパリンの着床促進作用が有効だったものと推察いたします。私たちの治療の成果が実り嬉しい限りです。

 

なお、後半部分は、私のブログ、2019.5.30「Compassionate transferとは」の記事でご紹介した内容についてだと思います。その時の解説にも記載したように、余剰胚の処理を自分の身体で行うという本法は、宗教的なバックグラウンドが弱い日本人にはそぐわないと思いますが、もし通院先の病院でそのような移植が可能であれば実施してみると良いでしょう。また、今後の医学の発展に向けて研究に提供するという方法もあります(主に大学病院など)。