Dr. Mの診療録 その19:結婚は何のため? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

 結婚は見知らぬ2人が愛し合って「君を一生幸せにする」とか「いつまでも一緒にいようね」などプロポーズの言葉で結ばれたはず。しかし、月日の経過と共に、いつしかその初心はどこかへ行ってしまうような気がする。特に不妊症の患者さんを毎日診ているという仕事柄、男女のすれ違いが如実にわかることがある。日本では、夫婦一緒に毎回外来にいらしている方は非常に珍しく、大概は女性一人で受診する。女性には母性というものがあり、「妊娠願望」が強いことが多い。通院するうちに、結婚の目的が「子供を作るため」に変わってしまう。精子が少なかったり、精子の動きが悪かったり、極端には精子がいない場合、極めてその男性の立場が弱くなってしまう。その結果、男性は不妊治療に消極的になったり、逆にとても協力的になったりするようだ。最近は、結婚年齢の高齢化と共に、最終的に妊娠・出産という目標が達せられないケースが増えているかもしれない。子宮や卵管や精子の状態よりも、年齢と共に必ず訪れる卵子の老化現象が、不妊症の最大の原因になってしまうからである。この時「子供のいない人生設計」を考えていない場合、両親や親戚など周囲の声に押されて、離婚に至ることも少なくない。「先生、私離婚しちゃった。だけどこれからも先生の外来に通っていいですか」「もちろん、どうぞ」こんな感じで不妊外来にも、離婚後定期的に通院している患者さんが意外とおられる(注釈:大学病院勤務時代まで)。何のために結婚したのか、一度初心に戻ってみたら状況も変わるかもしれないと、常々思っている。一方、お子さんを授かった女性も、子育てに忙しくなり、夫どころではなくなるようである。ここでも夫婦の意思統一と協力体制が重要で、「女性だけ子育てに忙しくて男性は何もしない」なんてよく言われる。男性の子育て参加は、日本の社会制度の問題もあり、一朝一夕にはうまくいかない。「ここだけの話だけど、この子がいれば旦那はだれでもよかった」という女性の声をとてもよく耳にする。結婚は何のためなのだろうか?