最近読んでよかった本 その67 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

最近読んでよかった3冊を簡単に紹介します。

なお、紹介の順番は五十音順にしています。

 

 

「モルフェウスの領域」海堂尊

桜宮市に新設された未来医学探究センターでは、世界初の人工冬眠技術により一人の少年を凍眠(コールドスリープ)させていた。9歳の少年「佐々木アツシ」はレチノブラストーマ(網膜芽細胞腫)により片目を失明し、もう片方の眼にも再発がみられ、両眼失明の危機にあった。アツシは新薬が認可されるまで5年間凍眠する道を選んだのだ。日比野涼子はこの施設でただ一人、アツシの生命維持業務を担当している職員。涼子は、凍眠から目覚めたときに起こりうる問題点に対処すべく制定された「凍眠八原則」には大きな落とし穴があることに気づく。涼子は、アツシを守るために起死回生の作戦を立てた。果たして、アツシが目覚めた時、実際に何が起こり、何が問題だったのか。日本の官僚制、薬剤認可制度、生命の尊厳、生命倫理を考えさせる海堂さんらしい作品です。

 

 

「レゾンデートル」知念実希人

知念実希人さんのデビュー作。自らが末期癌に冒されていることを知った大学病院勤務の32歳の外科医「岬雄貴」。自暴自棄となった岬は病院を辞め、酒浸りの日々を過ごす。そんなある日、不良から暴行を受けた岬は、体を鍛え上げ街の不良に復讐するという目的を見つける。不良は死んだ。それがきっかけとなり、岬は連続殺人鬼「ジャック」と接触を持つことになる。ジャックは、法律で裁くことができなかった犯罪者を自らの手で処刑する連続殺人犯だった。しかし、警察はジャックの影も形も把握できていない。雄貴はジャックから脅され、しぶしぶ殺人に手を染めることになる。余命幾ばくもない岬には身寄りが全くいなかったのだが、新潟から家出してきた少女「南波沙耶」が何者かから狙われていたのを助けたことから、孤独な岬に同居人ができる。雄貴、沙耶、ジャック、警察、それぞれの視点から物語は進み、クライマックスを迎える。フランス語の「レゾンデートル(raison d'etre)」は「存在理由」、残りの人生を生きる意義とは何か、人生とは何か、知念さんらしいテーマの作品です。

 

 

「連続殺人鬼カエル男ふたたび」中山七里

凄惨な殺害方法と幼児が書いたような稚拙な犯行声明文、五十音順に行われる凶行から、街中を震撼させた「カエル男連続猟奇殺人事件」。それから十ヵ月後、事件を担当した精神科医、御前崎教授の自宅が爆破され、その跡からは粉々になった死体が…。そしてつたない犯行声明文が見つかる。カエル男「当真勝雄」の報復なのか、あるいは医療刑務所から脱獄した勝雄の保護司「有働さゆり」の仕業なのか。第1作では「アイウエ」までだった殺人は、本作ではオから始まり、サ行のサシスへ飛ぶ。カエル男の恐怖におののく400頁をお楽しみください。なお、2017.1.7「最近読んでよかった本 その22」で第1作を紹介しました。