本論文は、父親にも葉酸が必要である可能性を示唆した初めての報告です。
Fertil Steril 2019; 111: 270(オランダ)doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.10.017
Fertil Steril 2019; 111: 251(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.11.017
要約:2010〜2012年に妊娠中の方1,156名のうち、パートナーの男性の協力が得られた1,018名を対象に、データが完備している511件の単胎妊娠について、自然妊娠303件とART妊娠208件(体外受精+顕微授精)の胎児発育と男性の赤血球中の葉酸濃度との関係を前方視的に検討しました。自然妊娠での結果は下記の通り(上位2/4に対する割合で有意差の見られた項目のみ数値を記載、NS=有意差なし)。
男性の葉酸濃度 下位1/4 下位2/4 上位2/4 上位1/4
CRLモデル1 NS -0.13倍 〜 -0.13倍
CRLモデル2 NS -0.10倍 〜 -0.16倍
CRLモデル3 NS -0.14倍 〜 -0.19倍
なお、ART妊娠では、男性の赤血球中の葉酸濃度と胎児発育に有意な違いは認めませんでした。
解説:女性の妊娠にとって葉酸は重要な役割を担っているのは周知の事実ですが、男性の葉酸に関する研究はほとんどありませんでした。男性は受精卵に半分の遺伝子を提供していますので、男性側の要因も考慮すべきと考えます。また、葉酸はDNAのメチル化に関与しており、精液中の葉酸濃度が精子のみならず受精卵のメチル化パターンの変化(エピジェネティクス)をもたらす可能性は否定できません。このような背景のもとに本論文の検討が行われ、父親にも葉酸が必要である可能性を示唆しています。しかし、上位2/4での胎児発育が最も良好であり、多過ぎも少な過ぎも発育が良くないので、葉酸を摂取すれば良いという訳ではなさそうです。
コメントでは、ART妊娠で有意差が出ず、自然妊娠のみで有意差が出たのは、ART妊娠では精液を除去しているため差が出なかったのではないかとしています。
下記の記事を参照してください。
2018.2.19「☆☆葉酸とメトホルミン」
2018.2.17「☆葉酸 vs. 葉酸塩」
2018.2.18「☆葉酸と妊娠成績」