Q&A2107 相互転座保因者ですが、遺伝カウンセリングの医師の見解が異なります | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 妻37歳 均衡型相互転座あり、夫 男性不妊等異常無し
初期流産を2回した後、妻に転座が発覚しました。妊娠した2回は、いずれもホルモン補充でユベラとバイアスピリンとプレドニンと柴苓湯とビタミンDを服用した状態で、シート法を行い凍結胚盤胞での移植でした。


最初に遺伝カウンセリングを受けた所からは相互転座がある人は4種類の受精卵ができてそのうち2種類(正常胚と均衡型胚)出産に至るから転座がない人より単純に出産できる卵は半分であることから十分希望があるようなことを言われました。ところが、別の所では相互転座の人は16種類受精卵ができてしまいそのうち出産できるのはたったの2種類(正常胚と均衡型胚)のみでかなり道のりが厳しいようなことを言われてしまいました。
 

①相互転座の場合は実際の所どちらの解釈が正しいのでしょうか。

②妻が37歳でしばらく地道に採卵を続けて貯卵してから移植する場合、出産までたどり着くにはおおむね何個ぐらいの胚盤胞を確保してから移植するといいのでしょうか。

③この年齢で転座持ちだと出産に至る胚は、だいたい胚盤胞が何個中に1個ぐらいの割合なのでしょうか。
④着床前診断は今の所は考えておりませんが、視野に入れた方がいいのでしょうか。

 

A 

初回のカウンセリングの医師は教科書的な説明をされ、別の所では特殊なパターンである隣接I型分離と隣接II型分離の可能性を加味した話をされたものと推察します。理論はどうあれ、実際に出産した赤ちゃんを調べてみると、不均衡転座の児が出産する頻度は下記のようになります。

 

母親が保因者           約10%

父親が保因者           約  5%

保因者が妊娠した時に流産する頻度 約15%

 

従って、それほど悲観的になる必要はありません。

②③一般的には、転座のない場合の2倍の胚が必要になります。37歳の女性の異常胚の確率は42.6%ですから、正常胚は57.4%、その半数が転座による異常だとすれば正常胚は28.7%になります。つまり、4個に1個が正常胚となる目安です。
④着床前診断はできれば行った方が早道になります。

 

2016.8.9「☆女性の年齢別染色体異常頻度 その2

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。