Dr. Mの診療録 その14:兄弟&姉妹のカップル | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

 不妊症で通っていた夫婦が妊娠し、赤ちゃんが生まれた。初孫の男の子で、両祖父母からも非常にかわいがられた。その後、この患者の妹さんは、患者の夫のお兄さんと結婚し、2つのカップルが男性側のご両親と一緒に住むという構図になった。程なく、妹さん夫婦が妊娠され、女の子が生まれた。すると、今までの状況は一変し、両祖父母を含め同じ屋根の下の家族全員がこの女の子をかわいがるようになった。そして、患者さんは「2人目が欲しいんです。だけど、絶対女の子じゃないとだめ」と言って外来を訪れたのである。男女生み分けというのは、病院では倫理的に無理であるが、技術的にも難しい。今、巷で言われている方法は全てその真偽が証明されていないのだ。よって、何ら手を施したわけではなかったが、偶然にも、女の子を妊娠した。このことは妊娠6ヶ月に入る頃に判明し、患者さんはとても喜んでいた。さて、いよいよお産になり、元気な女の子を出産した。本当に嬉しそうだった。1ヶ月検診では、さぞかし子育てを満喫しているだろうなと思っていたが、病院に現れると患者さんは元気がない。それもそのはず、両祖父母にとっては3人目の孫で、もはや女の子だからといって、ちやほやされる訳ではない。患者さんの「女の子」への期待感が強すぎた分、落胆も大きかったのだろう。不妊症の患者さんの中には、性別にこだわる方が少なからずいらっしゃるが、どっちがいいかなんて生まれてみなければ分わからないのかも知れない。大事なのは元気な赤ちゃんが生まれることではないだろうか。