本論文は、凍結融解胚移植において、ホルモン補充周期と自然排卵周期の成績を女性の年齢別に比較したものです。
Fertil Steril 2018; 110: 680(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.05.013
Fertil Steril 2018; 110: 636(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.06.020
要約:2013〜2017年に自己卵を用いた凍結胚盤胞移植において、ホルモン補充周期(923周期)と自然排卵周期(105周期)の成績を女性の年齢別に後方視的に比較しました。全体の結果は下記の通りで有意差を認めませんでした。
ホルモン補充周期 自然排卵周期
臨床妊娠率 57.3%(529/923) 54.3%(57/105)
出産率 46.0%(425/923) 44.8%(47/105)
流産率 17.0%(90/529) 15.8%(9/57)
しかし、出産率を年齢別に分けると、40歳以上の自然排卵周期では出産された方は1名もおりませんでした。
年齢 ホルモン補充周期 自然排卵周期
<35歳 57.4%(244/425) 53.2%(25/47)
35〜37歳 22.4%(95/425) 27.7%(13/47)
38〜39歳 13.2%(56/425) 19.1%(9/47)
>40歳 7.1%(30/425) 0%(0/47)
解説:欧米では新鮮胚移植が主流のため凍結胚移植はあまり実施されていませんでしたが、近年単一胚移植が推奨されるようになったため、凍結胚移植の必要性が高まっています。これまでにいくつかの研究が報告されていますが、凍結胚移植における最適な内膜調整方法は現在のところ明らかにされておりません。これは、今までに報告された研究にはいくつかの問題点(方法の不備、標準化の不備、初期胚移植、トリガーの影響)があるためです。本論文は、これらの問題点を解消した研究になっておりますが、後方視的な検討であるため結論を導くことができません。現状では、ホルモン補充周期と自然排卵周期は同等であること、40歳以上の女性ではホルモン補充周期が推奨されること、となります。本論文の著者はこの理由について、自然排卵周期では加齢により周期毎のばらつきが生じるためではないかと推察しています。
コメントでは、40歳以上の自然排卵周期はわずか6名しかいないため、40歳以上では自然排卵周期がダメであると言うことはできないとしています。また後方視的検討に過ぎないため、ここから導き出せる結論は確かなものではなく、今後の検討が必要です。