Q&A1977 乏精子症は本当に問題? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 妻35歳、夫39歳、第一子2歳。3年前の検査2回では精子数600万から800万、高速直進精子は0から8%、運動率は3割程度だったように記憶しています。乏精子症判明時はかなり厳しいコメントを医師からいただき、主人は大変意気消沈していました。
そんな中、第一子を直前のタイミングで授かっていたことがわかりました。タイミング1周期目か2周期目です。奇跡だと2つの病院で言われ、次は体外受精や顕微授精を覚悟してくださいねと。
ところが、ダメ元で先日取った第二子のための1回の自己流タイミングで、また妊娠反応がでました。とても驚くと同時に、30代の私を相手に2回の1発命中率。主人の精子でも自然妊娠は十分可能じゃないのかと感じています。
婦人科で指摘されたフーナー不良から始まり、何度も専門の病院に通い、夫婦の温度差に喧嘩もし、体外受精の通院の調整もし、と負担は大きかったです。人工授精までなら勧められても負担感も全然違ったのに、と、結果オーライですが不満に思う気持ちもあります。
これは、不妊原因が不妊原因にならないご夫婦もたくさんいる、という一例でしょうか。もしくは、乏精子症での自然妊娠や人工授精での妊娠に対する医師の姿勢が必要以上に厳しかったようにも思われますが、いかがでしょうか。

 

A 不思議に思うかも知れませんが、精液検査を含め不妊検査は絶対的な検査ではありません。精液検査が限りなくゼロに近い方でも自然妊娠はあり得ます。しかし、現在行なわれている妊娠治療は、あくまでも確率を上げるための治療ですので、全ての方に成り立つ訳ではありません。つまり、不妊検査や不育検査で見いだされる異常は原因ではなくリスク因子なのです。したがって、質問者さんのように、精液所見が良くない方でも、100発100中の方がおられても不思議ではありません。

 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。