本論文は、初回採卵での妊娠の有無が2回目及び3回目の採卵の妊娠成績に影響することを示しています。
Hum Reprod 2017; 32: 2287(英国)doi: 10.1093/humrep/dex293
要約:1999〜2008年の英国の体外受精統計(HFFA)112,549名のデータを用い、初回採卵完遂での妊娠成績と2回目及び3回目の採卵完遂での妊娠成績の関連を後方視的に検討しました。採卵完遂での妊娠成績とは、1回の採卵で新鮮胚移植と凍結融解胚移植を行い全ての胚を使いきった総合成績を言います。初回採卵完遂者の8.3%が「流産のみ(出産なし)」、29.5%が「少なくとも1名の出産」、62.3%が「妊娠判定陰性のみ」でした。これら3群における2回目+3回目の採卵完遂での妊娠成績は、それぞれ40.9%、49.0%、30.1%でした。累積出産率は、初回採卵完遂での「妊娠判定陰性のみ」群と比べ、「流産のみ(出産なし)」群で1.42倍、「少なくとも1名の出産」群で2.04倍に有意に高くなっていました。
解説:流産は女性にとって極めて大きな喪失体験のひとつです。流産後にしばらく立ち直れない方も少なくありません。本論文は後方視的検討ではありますが、初回採卵で(流産出産を問わず)妊娠した方は2回目及び3回目の採卵で妊娠が上手くいく確率が高いことを示しています。つまり、初回採卵で流産になったとしても、治療を続けていれば出産につながるので、諦めないで治療を続けて欲しいとしています。たとえ流産だったとしても妊娠判定陽性になった方は、妊娠判定陰性の方よりチャンスがあるわけです。全く反応が出ない方より反応が少しでも出る方の方が1歩前進しています。諦めないで治療を続けて欲しいと思います。