多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のメトホルミン治療について、米国生殖医学会(ASRM)からガイドラインが発表されましたので、ご紹介いたします。
Fertil Steril 2017; 108: 426(ASRM)doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.06.026.
要約:PCOSのメトホルミン治療について
(エビデンスレベル:A 根拠十分>B 根拠中等度>C 根拠不十分)
1 排卵率:プラセボ<メトホルミン単独(A)
2 出産率:プラセボ<メトホルミン単独(C)
3 排卵率、臨床妊娠率、出産率:クロミフェン単独>メトホルミン単独(B)
4 臨床妊娠率、出産率:レトロゾール単独<メトホルミン単独(C)
5 レトロゾール単独が第一選択の治療として望ましい(B)
6 排卵率、臨床妊娠率:メトホルミン+クロミフェン>クロミフェン単独(A)
出産率:メトホルミン+クロミフェン=クロミフェン単独(A)
7 出産率:メトホルミン単独3ヶ月+卵巣刺激で増加(B)
クロミフェン単独に抵抗性の方では、、、
8 排卵率、臨床妊娠率:メトホルミン+クロミフェン>クロミフェン単独(B)
9 臨床妊娠率:メトホルミン+クロミフェン=ドリリング+クロミフェン=ドリリング単独(B)
10 臨床妊娠率、出産率:メトホルミン単独=ドリリング単独(C)
11 排卵率:メトホルミン+クロミフェン=メトホルミン+レトロゾール=レトロゾール単独(C)
12 排卵率:メトホルミン+クロミフェン=HMG単独(C)
流産率、多胎妊娠率について、
13 メトホルミンを使用して妊娠し、妊娠判明時に中止しても流産率に影響しない(B)
14 妊娠中のメトホルミン使用により流産率が低下する(C)
15 メトホルミン単独は多胎妊娠率を増加させない(A)
16 メトホルミン+クロミフェンとクロミフェン単独を比較した多胎妊娠率はデータ不十分(C)
17 メトホルミン+FSH製剤とFSH製剤単独を比較した多胎妊娠率はデータ不十分(C)
18 メトホルミン単独が肥満女性とそうでない女性のどちらに有効かはデータ不十分(C)
解説:以上のエビデンスを踏まえ、下記のプランが推奨されます。
1 メトホルミンは第1選択にすべきではない
2 第1選択には、レトロゾールかクロミフェンを用いる
3 クロミフェン単独に抵抗性の方では、メトホルミン+クロミフェンを用いる
しかし、上記のエビデンスは半年程度の検討から導き出されたものであり、メトホルミンの長期投与による有用性は明らかにされていません。また、PCOSには多種多様な病態が混在しており、今後は個別化した治療方針が検討されるべきであると考えます。
下記の記事を参照してください。
2017.8.17「やはり、PCOSにはクロミフェンよりフェマーラ」
2017.4.23「☆多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)における治療戦略」
2015.9.22「☆PCOSでのメトホルミン治療:Cochrane review」
2015.3.8「☆PCOSの第一選択はフェマーラ」
2014.11.6「PCOSにはクロミフェンよりフェマーラ!」