ドナー精子により出産したお子さんへの出自の告知:フランス | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、ドナー精子により出産したお子さんへの出自の告知について、フランス全国のデータをまとめた初めての報告です。

 

Fertil Steril 2017; 108: 247(フランス)

要約:2002〜2012年にフランスの1施設でドナー精子による体外受精で妊娠・出産した317名に電話で出自の告知に関する調査の依頼を行いました。調査への参加の意思を示した157名(49.5%)に郵送でアンケート(20問)を送付し、105名(33.1%)から返信があり回答を分析しました。すでに告知すみであったのは40名(38%)で、ほとんどが(37名、93%)ドナーの治療開始前から告知を決めていました。また、告知をしていなかった65名(62%)の中で、まも無く告知する予定であるのが約2/3(42名、65%)、秘密にしておきたい方が約1/3(20名、31%)おりました。秘密にしておきたい方の半数(9名、45%)は、夫婦以外の第三者にドナー精子の使用について話をしていました。

 

解説:フランスでは、ドナー精子を用いた体外受精が盛んに行われています。1973年以降現在までに65,000組のカップルが治療を受け、およそ50,000名の赤ちゃんが誕生しています。現在は、27施設でドナー精子を用いた体外受精が実施されています。ドナー精子により出産したお子さんへの出自の告知は、大変デリケートな問題を含んでいます。したがって、件数の多いフランスでさえ回答率は、本論文で実質1/3です。回答された方の78%(82/105)の方は告知するとのことですが、アンケート調査に応じた方の多くは告知に前向きな方であることが想像されますので、真の告知率はもっと低いものと考えます。