Q&A1608 SCOと言われました | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q TESEをして精子が見つからず、セルトリオンリー(SCO)と診断されました。

1 ただ他の方でセルトリオンリーといってもいいほど精細菅は細いが、精子が見つかったという方がおり、この度妊娠に至っていると聞きます。セルトリオンリーとは全ての精細菅を探したわけではないので精子がいる可能性はあると言うことで間違いないでしょうか。

2 また海外では手術をしなくとも外から精子がどこの菅にいるか見つけることができる機械があると聞きました。日本にはないのでしょうか。
3 また精子は見つかったけど極めて数が少ない方が石川先生より「動物実験段階の薬を試めしませんか」と言われたようなのですがとても気になります。

こちらとしては「TESE→みつからない→ホルモン測定→異常あれば電話します」という流れのため、どんなに最新情報があっても藁をもすがる思いで、人によって話す話さないの片寄りなく情報がききたいのです。最近男性不妊、無精子症のブログテーマが少なく、リプロダクションクリニックは男女ともに通う方が多いよう拝見しておりますので、ブログテーマもぜひ無精子症など最新のものがありましたら配信をよろしくお願いいたします。
 

A 

1 セルトリオンリー(SCO)には2つのパターンがあります。一つは病理診断もTESE組織もSCOである場合、もう一つは病理診断でSCOですがTESE組織で精子が見つかる場合です。前者の場合には精子はどこにも作られていないものと考えられます。後者の場合には精子を作っていいる場所が見つかったという解釈です。なぜこのようなことが起きるかと言いますと、TESEの目的は元気な精子を探し受精卵を作ることですので、採取した精巣組織のうち良いところをICSI用に回し、最後に残った(あまり良くない)ところを病理に回すためです。

2 これは、研究段階のものではないかと推察します。当院でも、工学部の研究チームとの共同研究で、MRIや超音波で精子を作っている可能性の高い太い精細管を見つけることができないかという研究を行っています。近い将来実用化することを期待しています。

3 これは、動物実験段階の薬ではなく、サルベージ療法のことだと思います。毎日注射を打ち、精巣を活性化する方法です。残念ながら、この方法はSCOの方(病理診断もTESE組織もSCOである場合)には適応ではありません(石川先生にも確認済みです)。

現状を打開する可能性があるのは、iPS細胞からの精子形成です。現在、この研究は急速に進んでいますので、近い将来ヒトにも応用される時期が来ると思います。