Q&A1605 8回移植、かすりもしません | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 34歳から、8回移植してきましたが、一度も着床しません。かすりもしません。現在、40歳になりました。
新鮮初期胚移植(1回)、新鮮胚盤胞移植(2回)、凍結胚盤胞移植(5回)
採卵方法(計14回採卵)も毎回工夫してきましたし、移植方法も自然周期とホルモン補充周期で、毎回工夫してきました。アシストハッチング、スクラッチ、シート法、二段階移植、二個戻し、エンブリオグルー、生理食塩水で洗浄、移植日を一日後ろにずらすなど。移植時の内膜は10〜14㎜、受精卵のグレードも良いと言われています。漢方、鍼灸、運動もやってみました。でも着床しません。

着床障害の検査で引っかかったのは、3つ。
●抗核抗体(160〜320倍)
●甲状腺TSH(現在、チラージンを毎日50μg)
●内膜日付診(ホルモン補充周期で、2-3日の遅れ)
ちなみに、自然周期での内膜日付診も実施しましたが、ズレはありませんでした。
移植前からバイアスピリン、プレドニゾロンを服用しています。移植時には、子宮収縮防止の注射、その後はダクチルを服用しています。

あと凍結胚が5個あります(4日目初期胚盤胞、5日目胚盤胞2AB、3AA、3AA、4BA)。今までも4日目初期胚盤胞や5AAを二個移植してきて、かすりもしていないので、不安しかありません。

元々は男性不妊で、6年前に石川先生に手術していただきました。精子は、顕微授精では問題のないレベルです。私は、33歳の検査当時、年齢の割にAMHが高いのと、抗核抗体陽性以外、異常が見つからなかったため、すぐ妊娠できるものと思ってました。


移植前にまだやれることはあるでしょうか。次の移植方法は決まっていません。担当医は、もううちでやれることは全部やった、もうない、と。友人から不育で有名なクリニックを紹介されました。そちらで検査するのが良いでしょうか。

A 34歳から40歳まで一度も判定が出ないのは不自然です。必ず何か異常が見つかると思います。私はまだできることがあると思います。ヒトの着床についてはほとんど
何もわかっていませんので、世界中で様々な取り組みが試験的に行われています。リプロダクションクリニックでは、その中でも比較的根拠がしっかりしたものをオプション検査と称して実施しています。できるところをできる限り潰していくしかないと思います。

 

まだ実施していないと考えられる検査は下記です。

1 慢性子宮内膜炎検査(内膜日付診とは全く異なる検査です)

2 銅亜鉛検査

3 ビタミンD検査

4 不育検査は毎年アップデートされるため、全てが網羅されているか確認が必要です

5 子宮収縮検査をせずにダクチルを使用されておりますが、一度子宮収縮検査をしておいた方が良いかもしれません

 

なお、内膜日付診による着床の窓の推定は「できない」との結論が出ておりますので、ご注意下さい。