☆PGSモザイク胚について③PGS実施施設と非実施施設の考え方の違い | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、PGSモザイク胚についてPGS実施施設と非実施施設の考え方の違いをWeb調査により行なったものです。

 

Fertil Steril 2017; 107: 1092(イスラエル)

要約:PGSモザイク胚について、世界32カ国102施設にWeb調査を行い(合計108,900周期)、PGS実施87施設とPGS非実施15施設の意見を比較しました。PGSモザイク胚を廃棄すべきと答えた施設は、PGS実施施設の15%に対しPGS非実施施設では24%でした。その理由として、PGS非実施施設では「モザイク胚は極めて大きな問題であり、PGS本来の目的からは疑わしきものは排除すべきと考える」という意見が58%を占め、一方PGS実施施設では「モザイク胚は問題の一つかもしれないが、モザイク胚は体外受精では一般的に見られる現象である」という意見が66%を占めました。その上の対策として、PGS非実施施設では「提供胚を用いて、TE(胎盤になる細胞)とICM(胎児になる細胞)の染色体を全て調べ、染色体の一致率やモザイク率を検討すべきである」とし、一方PGS実施施設では「これまでに実施されたPGS結果と出生児のデータを後方視的に解析し、真のモザイクのリスクを知る必要がある」としています。

 

解説:最近の研究から、モザイク胚は体外受精では一般的に見られる現象であルため、モザイク胚であることが問題なのではなく、どのようなタイプのモザイク胚が問題なのかを明らかにすることがポイントであると考えられています。PGS実施施設では、概ねそのような考えに則っていますが、PGS非実施施設ではそうではありません。これは、PGS非実施施設では、ほとんどの胚にモザイクがある現象を目の当たりにしていないからであると推察します。何れにしても、今後の検討が待たれます。