凍結卵子と新鮮卵子の違いは? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、新鮮卵子と凍結卵子は同等の治療成績であることを示しています。

 

Fertil Steril 2016; 106: 1348(イタリア)

要約:2014年92名のドナーから卵子提供していただき、採取した卵子を半分に分け、半分は新鮮卵子として受精させ、半分は卵子凍結し融解後受精させ、妊娠成績を比較検討しました(92x2=184名のカップルの精子を使用)。なお、ドナーの平均年齢は28歳、卵子凍結はガラス化法を用い、閉鎖環境で凍結維持しました。結果は下記の通り。

 

         新鮮卵子   凍結卵子   有意差

妻年齢      43.2歳    43.5歳    なし

成熟卵数     10.7個    10.7個    なし

融解後卵数     〜      9.9個    〜

良好胚盤胞数    3.4      2.6    あり

胚移植個数    2.00個    1.96個    なし

臨床妊娠率    55.4%    58.7%    なし

着床率      41.8%    38.9%    なし

化学流産率      7.6%      2.2%    あり

流産率        4.3%      6.5%    なし

生産率      51.1%    52.1%    なし

 

一人の赤ちゃんを授かるのに必要な成熟卵数は新鮮卵子で14.8個、凍結卵子15.8個となります。

 

解説:イタリアでは卵子凍結の研究が進んでいます。これは、胚をヒトとみなすキリスト教の解釈により、胚凍結や胚の廃棄ができなかったためです。本論文は、新鮮卵子と凍結卵子は同等の成績であることを示しており、卵子凍結はもはや研究ではなく実用化していることを意味します。また、胚凍結の技術は日本が最先端ですが、同様に卵子凍結の技術もイタリアと同様に最先端であると考えます。

 

また、本論文では、閉鎖環境で凍結維持をしています。凍結タンク内での感染のリスクを低下させる方法として、今後普及するものと考えます。