☆子宮内膜症の方は不妊になりやすいのか | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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子宮内膜症の方は不妊になりやすいのでしょうか。実は、この件に関しては、これまで明らかにされていませんでした。本論文は、35歳未満の女性に限り、内膜症のある女性では不妊症のリスクが有意に増加することを示しています。

Hum Reprod 2016; 31: 1475(米国)
要約:1989~2005年40歳未満の女性58,427名を登録したナース•ヘルス•スタディーII(NHS-II)の中から、腹腔鏡により子宮内膜症の診断を受けた女性が、その後不妊症になるリスク(12ヶ月以上妊娠しない)を前方師的に検討しました。内膜症のない女性と比べ、内膜症のある女性では不妊症のリスクが2.12倍に有意に増加しました。ただし、内膜症の影響は35歳未満の女性に限定され、35歳以上の女性では有意差を認めませんでした。一人もお子さんがおられない内膜症の女性のうち50%の方が出産に至り、全ての内膜症の女性のうち83%は40歳までに少なくとも一人のお子さんを出産をしました。

解説:一般集団の5~10%、不妊症の方の20~30%に子宮内膜症があることが知られています。このため、内膜症のある女性は不妊症になりやすいのではないかと考えられていました。しかし、不妊症の方は、腹腔鏡を行う確率が高く、隠れた内膜症が見つかりやすいのも事実です(=過剰に診断してしまう)。したがって、「不妊症→内膜症」という後方視ではなく、「内膜症→不妊症」という前方視でみた研究が必要ですが、これまで行われていませんでした。ナース•ヘルス•スタディーII(NHS-II)は、大規模な前方視的研究であり、これまでにも重要なデータを供給しています。本論文は、NHS-II研究のひとつとして行われ、35歳未満の女性に限り、内膜症のある女性では不妊症のリスクが有意に増加することを示しています。しかし、内膜症の方の多くは出産に至ります。したがって、これまで内膜症は不妊原因と考えられていましたが、必ずしもそうではないことを示しています。非常に貴重なデータです。

下記の記事も参照してください。
2013.7.18「☆痩せすぎは内膜症になりやすい?」