Q&A1069 PCOS、精策静脈瘤、移植5回不成功 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 妻29歳、PCOS(ホルモン値正常値、ネックレスサインあり)、AMH14、肥満(BMI32)、たまに自力排卵あり。夫29歳、精策静脈瘤あり(数6000万前後、運動率55%前後、奇形率20%前後)、その時々によりかなり精子の状態が悪いときもあります。

タイミング1年、人工授精8回ですべて陰性後、転院。
①未熟卵体外受精(IVM)、33個採卵
 1回目 G3b5 陰性
 2回目 受精卵融解後胚盤胞にならず移植キャンセル
 3回目 G3b10&G3b5 2個移植 陰性
②アンタゴニスト法、1個だけ飛び抜けて成長してしまい、採卵数7個
 1回目 G2b3陰性
 2回目 G3b5&G3b7 2個移植 陰性
③ロング法、24個採卵、22個受精、8個凍結(G3b8、桑実胚2個、5日目胚盤胞3BC+4BB、6日目胚盤胞4BC×3)
 1回目 2段階胚移植 G3b10(元々G3b8)+5BB(元々4BB) 陰性

着床障害検査にてHOMA-R 3.0、NK活性 50%、血小板凝集能が引っ掛かりました。夫婦染色体検査は正常でした。インスリン拮抗性(HOMA-R上昇)に関しては、一年前からグリコランを服用しています。

Q1 現在凍結胚が残っている分に関しては移植していくつもりですが、もしそれで妊娠できなかった場合、今後どのようにしていけば良いのか悩んでいます。刺激周期をすると必ず、同じ大きさに卵が育たず、1つだけ5mm以上の差をつけて大きくなってしまうのでアンタゴニスト法はできません。
Q2 今まで陽性を見たことがありません。理由は何が考えられますか。

A
A1 1個だけ飛び抜けて成長してしまった場合、私は2番手に合わせるように採卵をプランします。したがって、アンタゴニスト法はできないということにはなりません。それよりも、卵巣刺激にしようする薬剤の選択が重要です。つまり、その方に合った刺激をしているかどうかです。また、精策静脈瘤の手術をして、精子の状態をより良いものにする作戦もお勧めいたします。
A2 29歳でこれだけ移植して一度も陽性判定がないのは不自然です。全てのオプション検査を行うことをお勧めいたします。転院先のクリニックで「着床障害検査」と称して行われている検査は「不育症検査」です。これは着床障害の検査ではありませんので、ご注意ください。不育症は流産と化学流産を意味しますので、一般的には妊娠判定陽性からの治療ですが、着床の後から妊娠判定日までに育たない場合を想定した場合は移植日から治療が開始されます。あくまでも着床の後の治療です。着床に関係するオプション検査として、慢性子宮内膜炎検査、子宮収縮検査、亜鉛検査を行いたいと思います。