Q&A1062 未熟卵が成熟した場合 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q  hCG注射を打ち、36時間後に採卵、未成熟卵を培養し、成熟卵になったところで、顕微授精し、5日目に3ABの胚盤胞になりました。

もしもですが、この未成熟卵が成熟卵で採卵できていたとしたら、未成熟で採卵した場合より、染色体異常の可能性が低いということはありますでしょうか。そういった論文がございましたら、ブログに掲載していただけませんでしょうか。また、そういった論文がない場合、理論上、先生はどのように推測されますでしょうか。

A 未熟卵を追加培養した場合に染色体異常が増えるのかについて検討した論文は、私の知る限りではありません。体内で成熟するか体外で成熟するかの違いですので、成熟すれば問題ない気が致しますが、根拠は全くありません。

論文が見つかり次第、記事にアップします。

そもそも、体外での未熟卵の培養方法(IVM)は現在のところ確立されていませんので、それぞれの施設で試験的(実験的)に行われているものです。したがって、すべての方に実用化できるレベルではありません。当院では、採卵できた卵子が1個しかない場合に限り1日培養していますが、成熟するのはごくわずかであり、成熟してもなかなか受精、分割といったハードルをクリアできないことが多いです。このような理由から、論文にできるほどの数が揃わないため、論文が発表されていないのだと思います。