Q&A1004 自然周期での胚移植時のE2は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 凍結胚盤胞移植の際、排卵後より5日目に採血したところ、P4 11、E2 66でした。主治医はE2の値が低いからこれから上がるとは思うけどお守りがわりに飲むように、とジュリナ(エストロゲン製剤)を1日3錠で7日後の判定日まで飲みました。結果、陰性でしたが、判定日の朝に生理がきました。25日周期でした。
翌周期、採卵に入ろうとしましたが、生理3日目のE2は88、FSHは6.8でしたが、1週間後の卵胞は全く育っていませんでした。主治医は「ジュリナで抑制が効きすぎたんだろう」といってました。AMH 1.5、生理3日目のFSH 12~14、E2もLowと出ることが多く、最近は刺激に反応しなくなりつつあります。
Q1 胚移植の際のE2が低すぎるとよくないのか、最低どのくらいあればいいのか
Q2 卵巣機能が落ちている場合、採卵周期前の高温期にはエストロゲン製剤は使わない方がよいのか
Q3 E2の値をあげるにはなにかよい方法はないか

A エストロゲン製剤によりE2が上がりFSHを低下させますので、FSHが高い方には有効な方法ですが、FSHが正常な方には卵胞発育の妨げになります。つまり、卵胞発育のアクセルはFSHであり、卵胞発育のブレーキはエストロゲン製剤です。なお、アクセルには、クロミッド、セキソビット、フェマーラ、hMG製剤、FSH製剤があります。

A1 自然周期の場合、排卵前後にE2が低下しますが、低いままですとよろしくありません。このような場合はE2の補充が必要です。なお、不思議に思われるかもしれませんが、移植に最低限必要なE2値についての明確な根拠はありません。当院では140としていますが、120、110、100としているクリニックもあるようです。
A2 卵巣機能が落ちている場合にはエストロゲン製剤は有効ですが、ここでいう卵巣機能が落ちている場合とは、FSH>15あるいはFSH>20の場合を指します。したがって、質問者(FSH 12~14)の場合には、エストロゲン製剤の使用は逆効果となります。主治医の「ジュリナで抑制が効きすぎたんだろう」との発言はこのことを意味しています。
A3 質問者さんの場合には、E2を増加させても卵胞発育の改善にはなりません。しかし、移植周期にE2が不足している場合には適度な補充が必要です。