本論文は、異所性妊娠(子宮外妊娠)のリスクを最も低下させるのは、凍結胚盤胞の単一胚移植であることを示しています。
Hum Reprod 2015; 30: 2048(オーストラリア&ニュージーランド)
要約:2009~2011年にオーストラリアとニュージーランドで体外受精を行なった方44,102名のデータを両国のデータベース(ANZARD)から入手し、異所性妊娠(子宮外妊娠)の頻度を解析しました。結果は下記の通り。
移植胚数 1個 2個 合計
新鮮 分割胚 1.7% 2.1% 1.9%
新鮮 胚盤胞 1.1% 1.9% 1.3%
凍結 分割胚 1.9% 1.4% 1.7%
凍結 胚盤胞 0.8% 1.1% 0.8%
合計 1.2% 1.8% 1.4%
したがって、異所性妊娠(子宮外妊娠)のリスクは、「凍結」「胚盤胞」「単一胚移植」の場合に低下し、「新鮮」「分割胚」「複数胚移植」の場合に増加します。
解説:米国の再診の統計によると、子宮外妊娠は全妊娠の1.4%です(2015.1.13「子宮外妊娠の最近の動向」の記事を参照してください)。本論文は、子宮外妊娠のリスクを最も低下させるのは、凍結胚盤胞の単一胚移植であることを示しており、0.8%(自然妊娠の約半分)になります。かつて体外受精の子宮外妊娠率は一般の場合よりも高くなることが知られていました。しかし、凍結技術の向上、培養技術の向上、単一胚移植の推奨によりり、現在ではむしろ低くなっています。
なお、子宮外妊娠率の増加に関連すると考えられるその他の要因は、卵管性不妊、子宮内膜症、骨盤内感染の既往、子宮外妊娠の既往があります。
本論文は2カ国の統計をまとめた、大規模な調査であり、信頼度の高いものと考えます。本来は、日本が最も凍結技術の進んだ国ですので、日本からのデータが英文論文で発表されて欲しいと思います。
下記の記事も参照してください。
2014.12.3「凍結融解胚移植で子宮外妊娠が減少」
2013.1.17「凍結融解胚移植では子宮外妊娠のリスクが低下」