Q&A869 ☆移植後の性交の是非 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2014.6.30「☆着床期の性交の是非」を拝見致しました。

初めて着床したにもかかわらず化学流産をしてしまい、次回に向けて出来る限りの事をしようと模索しております。可能性でしかないと思いながらも、「良い」と言われている事は行い、「悪い」とされていることはできるかぎり避けたいと思っております。その中での該当ブログ記事に関しては「良い」事だと思い、先月着床した際も、排卵後9日以内に2度の性交を行っており、そのおかげもあるのか、では次回も同様に今回以上の回数を検討してみようか、などと考えておりましたが、そのままネットサーフィンをしていると「着床時期前後の性交と自然妊娠の確率との関係」というノースカロライナ大学の記事も見つけました。該当ブログ記事の真逆が書かれております。

定期的な性交が妊娠の確率を上げるというのは、あちらこちらで見かける文章ですが、排卵後の精液(精子)との接触(暴露)が着床に有利かどうかという点において、再度、先生の見解をわかりやすく教えていただけると幸いです。

着床時期は子宮に振動を与えるのが良くないという記事も見つけ、生活必須ツールである自転車をその時期は止める覚悟をしているなど、必死に考えております。該当ブログとノースカロライナ大学研究記事が同時期であることもあり、非常に気になるため、お忙しいとは存じますが、何卒お力添えいただきたいと思います。

A 私のブログの2014.6.30「☆着床期の性交の是非」の記事と、「着床時期前後の性交と自然妊娠の確率との関係」というノースカロライナ大学の記事は、全く同じ論文ですので、真逆ではありません。

2014.6.30「☆着床期の性交の是非」をよくお読みいただけると同じ論文であることがわかると思います。私もこの論文を読んで驚き、すぐにブログで紹介しました。

時系列で示しましょう。まず、2012年に私はこのふたつの記事を紹介しました。
2012.9.23「☆排卵後の性交は意味がない?」:排卵前後の性交は、精液への暴露により免疫寛容となり着床が促進される可能性が指摘されていること
2012.11.29「体外受精のあとにも性交を!」:胚移植前後に性交を行うと妊娠継続率がよいこと
これらの元論文をもう一度読み直すと、「いつでも性交を行っている方が妊娠率が高いこと」「精液が着床のスイッチとなっていること」が明らかとなります。しかし、ピンポイントに着床期の性交の是非を調べた論文はそれまでありませんでした。

冒頭にある記事(2014.6.30「☆着床期の性交の是非」)は、ピンポイントに着床期の性交の是非を調べた初めての論文です。その結果、着床期の性交は妊娠率を低下させる可能性があるというものです。

私はこの論文を読んでから、「胚移植までに1~2回性交し、胚移植後の性交は控えるよう」指導しています。