☆膣炎には膣内へのアシドフィルス菌製剤が有効 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

ブログの読者から、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidofilus)の膣内投与で膣炎が治ったという報告を受け、論文を調べてみました。
膣を守っているのはラクトバチルスです。2012.12.27「☆繰り返す膣炎にはヨーグルトを!」の記事では、ヨーグルト摂取により、膣内細菌のバランスが改善し、細菌性膣症やカンジダ膣炎が軽快することをご紹介しました。乳酸菌には乳酸球菌と乳酸桿菌があり、アシドフィルス菌はまさに乳酸桿菌(ラクトバチルス)そのものです。本論文は、アシドフィルス菌製剤を直接膣内へ挿入することで、膣炎が良くなることを示しており、新しい膣炎の治療法として期待されます。

Minerva Ginecol 2006; 58: 227
要約:細菌性膣症のある18~40歳の健常女性60名をランダムに2群に分け、A群(アシドフィルス菌Calagin膣剤)B群(アシドフィルス菌Calagin膣剤+ラクトバチルスparacasei菌Gene-filus F19内服)の治療を3ヶ月間行ないました。両群とも治療終了時の膣内pHは有意に低下(酸性化)し、自覚症状が軽快しました。また、この効果は治療終了後3ヶ月継続しました。

解説:1899年、パスツール研究所のティシエが、健康な母乳栄養児の糞便からビフィズス菌を発見し、翌1900年、ビフィズス菌とは別の菌の存在を発見したのがオーストリアのモローで、アシドフィルス菌と名付けました。アシドフィルス菌は、ヒトの腸内、口腔、生殖器などに存在している乳酸菌の一種です。乳酸菌類は、腸内で乳酸を産生することで、腸内細菌の善玉菌が働きやすい酸性の環境をつくり、腸内環境を整える効果があります。アシドフィルス菌は熱や酸に強いため、腸への到達率は70%と効率がよく、ヨーグルトなどの乳製品に使用されています。本論文は、アシドフィルス菌を直接膣内へ挿入することで、膣炎が軽快することを示しています。抗生剤あるいは抗菌剤による治療しかなかった膣炎の治療に一石を投じる新しい治療で、これまで治らなかった難治性の膣炎の方への効果が期待できます。なお、本論文で使用した薬剤は、どちらもイタリアのSIFFRA社製です(イタリア語のサイトしかありません)。

また、アシドフィルス菌の健康効果として、腸内環境を整える効果以外にも、免疫力を高める効果、口臭を予防する効果、胃炎や胃潰瘍を予防する効果があることが知られています。