Q&A640 海外で治療、プロテインS活性低下 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 米国で治療中
妊娠前に、プロテインS活性が52%で、妊娠が発覚してから、Lovenox(enoxaparin=低分子へパリン)を毎日2回打ってます。プロテインS活性以外にも、血液凝固関係でMTFHR、PAI-1検査がヘテロでした。不育症の先生も、血液専門医も、Lovenoxは妊娠13~14週で止めていいとのことで、血液凝固が起こるのは、胎盤が完成する前で、その後は心配しなくていいとの事でした。Lovenoxを使用し続けると、胎盤から出血する可能性があるので危険だということでした。
へパリンを使うと本当に、胎盤からの出血の可能性があるのでしょうか。私の場合、このままLovenoxを使い続けたほうがいいのでしょうか。

A プロテインS活性低下の場合の妊娠管理について、しっかりとしたエビデンスはありません。しかし、これまでの論文のデータから、妊娠中のプロテインS活性は30%以上をキープするのが望ましいとされています。また、胎盤は妊娠16週に完成し、それまでは血液凝固系の治療が望ましいと考えています。したがって、私は妊娠16週まではヘパリンを使用し、プロテインS活性が30%未満の場合にのみ、その後のヘパリンの継続使用お勧めしています。なお、アスピリンやバイアスピリンは、日本では添付文書の縛りから、妊娠28週までとしていますが、外国では妊娠の満期まで使用しています。なお、この添付文書の記載内容に科学的根拠はありません。

下記の記事を参照してください。
2013.8.16「☆プロテインS活性低下」