流産後に次の妊娠までにかかる時間 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

流産は妊娠できた証明でもあります。したがって、全く妊娠反応が出ないよりは一歩進んだ状態と考えてよいでしょう。これまでは漠然と、一度流産した方は次の妊娠がし易いのではないかと考えられていましたが、本当にそうなのかについては明らかにされていませんでした。本論文は、一度流産した方は次の妊娠するまでの期間が1周期長くなることを示しています。

Hum Reprod 2014; 29: 2553(米国)
要約:2005~2009年にミシガン州とテキサス州で16カ所の地域から、501組の夫婦を調査しました(LIFEスタディー)。この期間に、流産を経験した70組の方(女性の平均年齢30歳)で、次の妊娠が成立しました(61名は2回目、9名は3回目の妊娠)。前回の妊娠と比べ、2回目で59%、3回目で43%の方が、前回より長い期間を要しました。見方を変えると、妊孕性(妊娠できる力)は、2回目で0.42倍、3回目で0.64倍と有意に低下しました。周期数では、平均1周期余分にかかった計算ですが、25%以上の方は、3周期以上余分に時間が必要でした。

解説:これまで、2つの論文で、妊娠しやすい方は、1回目と2回目の妊娠するまでの時間は同じという報告されていました。しかし、流産の経験がある方での検討はなされていませんでした。本論文は、流産の経験のある方では、1回目の妊娠より2回目の妊娠するまでの時間が1周期長くかかることを示しています。1回目より2回目の方が歳をとっていますから、卵子は少し老化しています。そう考えれば、あたりまえの結論かもしれません。

流産すると妊娠し易くなるという巷の考えは根拠がないものであることがわかりました。いずれにしても、早めに次ぎの妊娠へ向けて切り替えていくのが良いと思います。私が医師になった26年前は、流産後3ヶ月ほど待ってから次の妊娠を目指しましょうと指導していましたが、hCGがゼロになっていれば、翌月でも次の妊娠を目指していくべきだと思います。