Q&A560 凍結融解胚移植で陰性、タイミングと新鮮初期胚移植で妊娠(流産) | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2014.7.13「Q&A397 移植に向かない人がいるのか」の続き
その後妊娠しましたが、心拍確認できず流産となりそうです。
今後の治療について考えたいのでまた相談させていただきます。

夫40歳、妻41歳、男性不妊、顕微授精(採卵6回、移植7回)、AMH は1年半前に0.22
39歳時に顕微授精の合間(採卵1回、移植2回の陰性後)のタイミングで一度妊娠し、6週で心拍確認後、8週で稽留流産となりました。採卵数はショート法で2~5個、クロミッド+hMGで3~4個でした。毎回1~4個がそれなりに良好な胚(クリニックは詳細なグレードをつけないのですが、1とか2とか)になり、クロミッドのときは5日目桑実胚と胚盤胞で、これまで計7個の胚を移植しました。

前回の相談の後、夫には男性外来を受診してもらいましたが、形態的にもホルモンの面でも何も問題ないが、精液がそもそも少なく運動率も悪いということで、クロミフェンと補中益気湯を処方されました。男性外来での検査では精子数が5300万あったので、この秋に初めて人工授精を希望しましたが、60万しかなくキャンセルになりました。

その後、ショート法で採卵(3個採卵、2個受精)、新鮮胚移植を行い妊娠しましたが、6週で胎嚢の中に何も見えず流産となりそうです(院内採精で精子数1100万、奇形率64%でした。よくないとは思いましたが、禁欲期間が長かったです)。

今後も妊娠治療を続けるとして、転院すべきか悩んでいます(転院先の予約は取れています)。そのクリニックは「AMHが低くても最初はロング法、前周期はピル使用」「胚盤胞まで培養」などの特徴があるようです。ただAMHが低くてもロング法で転院前よりたくさん採卵できたという方もいるようです。私の場合は、これまで桑実胚や胚盤胞を移植しても結果が出ず、今回初めて3日目胚を移植しての妊娠だったことから、胚盤胞を目指すのが合っているのか、とても気になっています。1回2~4個しか受精卵ができていないのに、胚盤胞を目指していてはそもそもほとんど移植できないのではないかということもあります。AMHが低いこと、どちらかというとクロミッドの方が効率的に採卵できていることなども気になります。

今の先生は実直ですが、楽観的なことや安心できるようなことはほとんど言ってくださいません。転院先の先生はとても優しいと評判なことも少しは気になります。これまでの1年10ヶ月の治療は辛いことも多かったです。それでもやり方が合っているかということと結果が全てですので、これまで時間はかかっても2回妊娠させてくださった今の主治医を信じてついていくべきなのでしょうか。また、今回の妊娠は私の希望でショート法+新鮮胚移植でしたが、今後今の主治医からはクロミッドを勧められそうに思います。誘発方法は妊娠率とは関係ないのでしょうか。さらにクロミッドでは内膜が薄くなって新鮮胚移植が難しそうですが、一般的には凍結胚移植の方が妊娠率が高くても、私の場合新鮮胚移植の方が向いている、よってクロミッド採卵は向いていない、ということはないでしょうか。

A 凍結融解胚移植では結果が出ていませんが、タイミングと新鮮胚移植で妊娠していますので、凍結が向いていない可能性が高いと思います。このような場合に私は、妊娠した時の方法を踏襲して治療のプランを立てます。したがって、ショート法+新鮮初期胚移植でいきたいと思います。クロミッドを使用してもそれほど内膜が薄くならない方もおられますので、その場合には、クロミッド+新鮮胚移植の選択もあります。ただ、内膜が薄くなってしまう方にはお勧めできません。

1年半前のAMH 0.22ですので、卵巣機能の低下を懸念し、私ならロング法もピルも使用しません。胚盤胞を目指すことは得策ではないように思います。したがって、転院先での治療は、一度はトライしてみても良いとは思いますが、あまりお勧めできないように思います。