Q&A492 夫リンパ球移植後、子宮外妊娠1回、化学流産3回 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 32歳、流産1回、夫リンパ球移植
妊娠8週での流産後に不育の検査を受けて、3年前に夫リンパ球移植をしてしまいました。それ以降、妊娠はするのですが、子宮外妊娠1回と化学流産3回をしています(判定日のhCG 80~170)。リプロでの検査の結果、異常値は下記でした。
◎ループスアンチコアグラント 1.23
◎TAT 25.0
◎alpha2PIC 3.6
◎プロテインS活性 89%
今後、体外受精をしながらヘパリンとアスピリン療法をしてもらう予定です。

夫リンパ球移植をすると理論的に不妊になってしまう事があるかもとの先生のコメントを見たのですが、そうだとするとリンパ球移植をして、あう人は良いが、あわなかった者は、今後どのような治療もないのでしょうか。不育治療をしても妊娠出産は、期待できないのでしょうか。夫リンパ球移植後の不育治療や、検査についての情報をお願い致します。

A 現在は、凝固系に亢進がみられるパターンですので、ヘパリン•アスピリン療法が良いと思います。

夫リンパ球移植後に妊娠しにくくなる場合には、自己免疫異常(自己抗体など)が関与するのではないかと考えられています。つまり、抗リン脂質抗体や膠原病を誘発する可能性です。ループスアンチコアグラントはこの数値ですと陽性に扱わない医師もおられるかもしれませんが、私は弱陽性と考えています。ただ、その他の抗体が陽性ではありませんので、夫リンパ球移植の影響はほとんどないのではないかと考えています。

もし、夫リンパ球移植後に自己抗体が多数生じてしまった場合には、抗体を抑える治療、あるいは抗体が悪さをしないようにする治療を行うことで対処できます。私は、現状であれば十分、妊娠出産が可能だと考えています。不育と不妊の治療を同時に行う必要がありますので、同一施設で両方の治療ができる、当院のスタイルが望ましいと思います。