Q&A80 子宮筋腫オペ後、内膜が厚くなりません | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 32歳の時に富細胞性平滑筋腫の手術をしました。人工授精を行うのに排卵誘発をしたところ、筋腫が再発し、今年4月に摘出手術をしました。今月誘発周期に入ることができ、今前向きに頑張っています。内膜がなかなか厚くならず、9 mm以上の厚さになったことがありません。ホルモン剤を使用すると、また筋腫ができてしまうのではないかという不安でいっぱいです。現在、ユベラ600 mg分3、ビタミンCを服用しています。どうしたら、内膜を厚くすることがでしょうか。

A 私は、子宮内膜が8 mmあれば十分だと考えています。もっと薄くても妊娠は可能と報告されています。詳細は、2013.8.11「☆人工授精の妊娠率は子宮内膜厚に左右される」をご覧ください。

また、富細胞平滑筋腫(celular leiomyoma)は、良性(子宮筋腫)と悪性(子宮肉腫)の中間群の子宮腫瘍として位置づけられています。 基本的に良性の経過をとるので、治療は良性と同等でよいとされていますが、再発もありえます。そのため、慎重な経過観察が必要と考えられています。
顕微鏡レベルの検査で初めて診断がつきますが、核分裂、細胞異型、細胞密度によって鑑別します。HendricksonとKempson の診断基準では、核分裂が最も重要とされており、強拡大10視野あたり10個以上の核分裂のあるものが子宮肉腫と診断されます。それ以下のものは細胞異型と細胞密度を考慮して、変形筋腫(bizareleiomyoma)や富細胞筋腫(celular leiomyoma)などに分類され、悪性度不明群ま たは中間群と位置づけられています。
しかし、核分裂が9個と10個はそう変わりません。悩ましい症例もあります。診断を下す病理の先生も、お話をする医師も、このような場合は中間群といっても、より慎重にならざるを得ません。