コントロール不良の喘息の方は流産しやすい | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

喘息発作が母体に起こると母体はもちろんですが、胎児も低酸素になります。本論文は、コントロール不良の喘息の方は流産の確率が高くなることを示しています。

Hum Reprod 2013; 28: 908(カナダ)
要約:カナダ、ケベック州の1992~2002年の妊婦のデータベースから、15107名の喘息の方と34331名の喘息でない方を抽出し、流産と出産について検討しました。喘息の方は1.41倍流産リスクが高く、特にコントロールできない喘息では26%が流産に至りました。

解説:喘息は、8.8%の妊婦にみられる疾患で、コントロール不良の喘息は、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)、帝王切開、低体重児、先天異常のリスクが高くなることがこれまで報告されていますが、いずれも症例数が少なくデータとしては不十分でした。本研究はカナダでの5万人規模の研究であり、重要なデータを示しています。

喘息の方の妊娠中のケアの最重要課題は如何に発作を起こさないかにかかっています。患者さんや内科医はしばしば胎児への薬剤の影響を危惧しますが、発作が起きて母子ともに低酸素になる方が胎児にとって大きな問題となります。薬剤を使用せず発作を起こすより、薬剤を使用して発作を起こさない(あるいは軽減する)方が赤ちゃんにとって得策と考えられます。喘息の治療や予防に使われる薬剤は、胎児や子宮にとってマイナスになるものはほとんどありません。つまり、発作が起きないように薬剤で良好にコントロールすることが肝要となります。