タバコの影響:疾病死亡率 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

以前、禁煙の方法を載せて下さいというリクエストがありました。いろいろと調べてみたのですが、私はタバコを吸いませんので、どの方法がよいのか悪いのか、皆目見当がつきません。義父はタバコを絶対にやめないと言っていましたが、脳梗塞になってピタッとやめました。ほとんどの方は、病気になるとやめる(やめられる)ようです。ですから、タバコの危険性を認識するのが一番と考え、見つけたのが今回ご紹介する論文です。今年の1月に発表されたもので、New England Journal of Medicineという臨床医学では世界一評価の高い雑誌です。

N Engl J Med 2013; 368: 341(カナダ)
要約:25歳~79歳の113,752名の女性と88,496名の男性を1997~2004年に問診し、その後の死因を2006年に調査しました(女性8236名、男性7479名死亡)。喫煙者(過去~現在まで継続)の死亡率は非喫煙者の約3倍(女性3.0倍、男性2.8倍)でした。喫煙者の死因は、タバコが原因の癌•心血管疾患•呼吸器疾患でした。逆に、79歳まで生存する確率は、非喫煙者が喫煙者(過去~現在まで継続)の約2倍(女性70% vs. 38%、男性61% vs. 26%)でした。非喫煙者と比べ、喫煙者(過去~現在まで継続)は生存年数が10年以上短くなります。しかし、喫煙者でも25~34歳、35~44歳、45~54歳でタバコをやめた方は、ずっと喫煙を続けていた方と比べ、それぞれ10年、9年、6年長生きします。

N Engl J Med 2013; 368: 351(米国)
要約:1959~1965年(A)、1982~1988年(B)、2000~2010年(C)の3つの期間で死亡率と死因を分析しました。非喫煙者と比べ、喫煙者(過去~現在まで継続)肺がんでの死亡率は、A、B、Cの期間でそれぞれ、女性は2.73倍、12.65倍、25.66倍、男性は12.22倍、23.81倍、24.97倍でした。同様に、非喫煙者と比べ、喫煙者(過去~現在まで継続)閉塞性肺疾患での死亡率は、女性22.35倍、男性25.61倍虚血性心疾患での死亡率は、女性2.86倍、男性2.50倍脳梗塞での死亡率は、女性2.10倍、男性1.92倍全ての死亡率は、女性2.76倍、男性2.80倍でした。55~74歳の女性、60~74歳の男性の全ての死因で喫煙者(過去~現在まで継続)は非喫煙者の3倍以上の死亡率でした。どの年代でもタバコをやめると劇的に死亡率は改善しました

解説:2つの論文に共通して言える事は、禁煙は何歳から行っても遅くはないということです。自分の人生をよりよく生きるために、自ら意識改革して禁煙に取り組むことも大切ですが、医療者ももっと啓蒙活動や具体的な禁煙促進活動を行う必要があると思います。

妊娠を目指した場合のデメリットについての詳細は、2013.1.5「タバコの影響:学会のオフィシャルコメント」に掲載しましたので、併せてご覧ください。