タバコで子宮外妊娠の確率が増加 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

タバコについては、これまでにいくつか紹介してきました。特に、2013.1.5「タバコの影響:学会のオフィシャルコメント」にまとめてあります。タバコで子宮外妊娠の確率が用量依存性に(本数が増えれば増えるほど)増加することが知られていますが、本論文は、タバコは卵管の構造には影響がないことを示しています。おそらく卵管の機能に障害をもたらすのではないかと推察しています。

Fertil Steril 2013; 99: 199
要約:卵管不妊手術(卵管の途中を切断する手術)を行った喫煙者9名、非喫煙者11名の方から切除した卵管を提供していただき、その構造を調べました。卵管の繊毛(卵子を移動させる原動力)の状態やそれを作る遺伝子(転写因子:FOXJ1, RFX2, RFX3)には喫煙の有無で違いはありませんでした。

解説:子宮外妊娠をきたした卵管では繊毛が少ないという報告や、喫煙者の気管支の繊毛が少ないとの報告があります。タバコを吸う女性は、子宮外妊娠の確率が高い事が知られているため、卵管の繊毛を調べるという発想が生まれました。しかし予想に反し、喫煙の有無によって卵管の繊毛の構造には違いを認めませんでしたので、それ以外の機能的な要因の関与が考えられることになります。タバコには4000を超える化学物質が含まれ、たとえばその中のコチニン(ニコチンではありません)は、卵管のプキネクチン受容体を増加させます。プキネクチンは平滑筋収縮作用と着床に必要なLIFを調節する働きがありますので、子宮外妊娠を増加させる方向にはなることは考えられます。