☆サウナは精子を悪くする | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

精子は熱に弱いことを、2012.9.28「精巣の温度 その1」2012.9.29「精巣の温度 その2」2012.9.30「精巣の温度 その3」でご紹介しました。本論文は、サウナは精子の状態を悪くすることを示したものです。

Hum Reprod 2013; 28:877 (advance access published feb 14, 2013)
要約:10名の健常男性(平均33.2歳)に、温度80~90℃、湿度20~30%のサウナに15分ずつ、週2回、3ヶ月間入ってもらいました。精巣温度を測定し、採血(ホルモン検査)と精液検査を行いました。計測ポイントは、開始前(T0)、サウナコース3ヶ月終了時(T1)、サウナ終了後3ヶ月(T2)、サウナ終了後6ヶ月(T3)で行いました。T1時に、精子濃度および精子運動率が大きく低下していましたが、ホルモン値は変わりませんでした。T1では、DNA、ヒストン、クロマチン、ミトコンドリアの傷害が認められ、アポトーシス(細胞死)が増え、熱や低酸素の際に活性化する遺伝子群が増加していました。これらの現象はT3では元に戻っていました。

解説:本論文には、Finnish Sauna(フィンランドのサウナ)と書かれています。それもそのはず、サウナという言葉もフィンランド語で、フィンランド人にとってのサウナは、日本人にとってのお風呂と同じくらい生活に欠かせないようです。フィンランドでは、2.5人に1つ、つまり1軒に1つのサウナがあるそうです。しかし、この論文はイタリアから発表されました。
本論文では、精液所見が悪い場合には、熱や低酸素の際に活性化する遺伝子群が増加することを示しています。これらの遺伝子は、身体や細胞を守る遺伝子ですので、温度が高くなった時に、精子を守るために一時的に遺伝子が活性化されるのだろうと考えられます。精子は2ヶ月半ほどで新しい精子ができますので、精子への温度の影響は幸い可逆性です。北欧発祥のサウナも、今や全世界に広がっていますので、サウナ好きの男性は注意が必要です。日本でサウナに入る機会があるとしたら、ゴルフ場かスポーツジムくらいでしょう。しかし、同様な現象は、カゼやインフルエンザなどで高熱が出た際にも起こります。男性は、カゼで高熱が出たら、すぐに解熱剤を使うことをお勧めします。

なお、本論文は、「京野アートクリック高輪」の竹内巧院長から、まだ雑誌に掲載されていない論文情報として教えて頂きました。ありがとうございます。