精子に必要な抗酸化物質と微量栄養素 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

2012.10.14「精子には抗酸化物質を」2012.11.26「男性はトマト、女性はニンジンとカボチャ?」では、精子は活性酸素の影響を受けて簡単に状態が悪くなってしまうことを述べました。本論文は、精子に必要な抗酸化物質および微量栄養素は、ビタミンC、ビタミンE、葉酸、亜鉛であることを示しています。

Fertil Steril 2012; 98: 1130
要約:22~80歳の非喫煙男性80名の精子のDNAダメージと微量栄養素摂取の状況を調査しました。ビタミンC、ビタミンE、葉酸、亜鉛の摂取が多いほど精子のDNAダメージが低いという結果でした。これは、高齢の男性(44歳以上)で顕著で、若年男性(44歳未満)では微量栄養素摂取のメリットは認められませんでした。高齢男性(44歳以上)で、ビタミンC、ビタミンE、葉酸、亜鉛を最大に摂取している方は、丁度若年男性(44歳未満)と同じレベルにまでDNAダメージが低下していました。また、β-カロテン摂取の効果は認められませんでした。

解説:2012.10.14「精子には抗酸化物質を」では、抗酸化物質(クリプトキサンチン、ビタミンC、リコぺン、β-カロテン)は活性酸素から細胞を保護する作用があり、抗酸化物質の摂取が精子に良いことを示しました。2012.11.26「男性はトマト、女性はニンジンとカボチャ?」では、ベータカロテン(ニンジン、カボチャに多く含まれます)は、肝臓、副腎、腎臓、卵巣、脂肪に多くリコペン(トマトに多く含まれます)は精巣に多く集積していることを紹介しました。活性酸素を消去する力はベータカロテンと比較して、リコペンは2.21倍、ビタミンEは0.01倍です。つまり、精巣には非常に強力な抗酸化作用を備えているリコペンが集積しているわけです(自分では作れないので、選択的に集まってくる訳です)。残念ながら、本論文ではリコペンの検討はされていません。β-カロテンは卵巣に集積するので、男性ではなく女性によいのではないでしょうか。